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青空レポート No.26/1
はじめに・不登校への支援
2025.03.01

1 はじめに・不登校への支援
2 岩手県庁舎建替え、何が課題?
3 文化芸術をもっと大事に・おわりに
はじめに
特別に読書好きという訳でなくただただ本が好きという感覚で、私は図書室が大好きでした。小学生の頃は良く世界地図を眺めていました。中学校で始まった英語の授業は、世界が勝手に身近になりました。高校生で初めてアメリカへ行く機会を頂き、英語はツールにすぎないこと、思っていた以上に世界はものすごく広く、けれど近くもあるという感覚を初めて学びました。日本人であることや岩手県出身であることを初めて意識した時でもありました。たくさんの「違い」に触れることで自分も違って良いんだって、想えたのだろうか。
何となく視野が狭くなっているかも、最近そう想うことが多々あります。そんな中で一目惚れした、へラルボニーの作品に、「地球を美しくしようと言う真鍋さん」というタイトルが付いていました。ただただ自分の足元ばかりに精一杯な自分だったなあと。私も地球規模で美しくしていきたいです。昨年末の12月定例会で一般質問を終え、いまは新年度の予算編成に向けた議論を前に、小さくまとまるな!と自分に喝を入れております。
「地球を美しくしようと言う真鍋さん」という作品のワンピース(ヘラルボニー)を着て

「不登校」と言っても、背景も必要な支援もさまざま。岩手県として、いままでしてきたこと、これからしていかなければならないこと。子どもを育てる1人の親として、スピード感を持って動いていかなくてはと思うテーマの一つです。
不登校って?
「不登校」の定義がむずかしい
文部科学省では「不登校児童生徒とは何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由によるものを除く」と定義しています。不登校の要因や背景として挙げられるのは、不安などの情緒的混乱が42.1%ともっとも多く、ついで無気力が28.1%となっており(平成19年度のデータ※新しいのを探す)不登校=いじめと一概に言える状況ではなくなってきているのです。
2023年度文部科学省の調査によると、岩手県の不登校の児童生徒は、過去最多となりました。前年度よりも17.9%(464人)増の3052人の児童生徒が小中学校を30日以上欠席しています。
「不登校」は身近な話
学校では、先生に余裕がないため子どもたちが相談できない、先生もいじめへの対応に自信がない、といった現状があるようです。また、「タッチ登校(スモールステップで登校につなげていく支援のひとつ)」などは不登校とはカウントされない、など実際に悩んでいる家庭は公表されている数よりもずっと多いと推測されます。また、公的支援につながるのは全体の8%ほどと言われ、その少なさも問題と言えるのではないでしょうか。めまぐるしく変化していく現代の親子関係に合わせて、公的支援もアップデートが必要です。
岩手県にあるフリースクール
フリースクールというのは、文部科学省の定義によれば「不登校の子供に対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設」を指します。
文部科学省が平成27年8月に行った「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」によると、フリースクールの会費(授業料)の月額の平均額は約33,000円。入会金の平均額は約53,000円となっています。
※岩手県のウェブサイトでは、令和5年度岩手県不登校児童生徒支援連絡会議に出席し、ホームページへの掲載を希望した団体のみの掲載
動物園×フリースクール
盛岡市動物公園内で運営されているフリースクール「ぐるぐるの森」。全国でも珍しい動物園内のフリースクールとして注目を集める中、代表の山内まどかさんに、設立の経緯や理念、そして不登校支援の未来について語っていただきました。子供服店の経営から始まり、社会起業家として新しい教育の形を模索する山内さんの挑戦は、教育と福祉の新しい可能性を示唆しています。
「ぐるぐるの森」は動物公園の中にあります
まどかさんとのお話から
●「ぐるぐるの森」を始められたきっかけを教えていただけますか?
2015年か16年頃から、フリースクールの存在を知り、盛岡に作りたいと考えていました。当時は自分の子供もまだ小さかったので、将来的な目標として温めていました。そして2021年から実際に活動を開始し、2022年末から本格的な運営を始めることができました。
●動物園での活動について、具体的にどのような経緯があったのでしょうか?
動物園の民営化がきっかけの一つでした。動物園内の未使用スペースを有効活用する取り組みの中で、私たちの活動場所として現在の場所を使用させていただくことになりました。不登校の子どもたちにとって、自然に囲まれた環境は非常に良い影響があると考えています。
●現在の活動状況について教えていただけますか?
現在5人の生徒が通っています。午前中は学習に重点を置き、元教員のボランティアの方々にもご協力いただきながら、オンライン学習教材も活用し、それぞれの子どもの状況に合わせた学習支援を行っています。午後は主に園内での活動を中心に過ごしています。
●フリースクールの運営における課題
経済的な面での課題があります。例えば長野県では行政による認定制度があり、フリースクールへの支援体制が整っていますが、多くの地域ではまだそういった制度が整っていません。ただし、支援の問題だけでなく、フリースクールの認知度を上げ、その役割を理解してもらうことも重要だと考えています。
●今後の展望についてお聞かせください。
将来的には「フリースクール」という概念自体がなくなることが理想です。学校教育の形が変わっていく中で、教師も生徒も共にハッピーになれる環境づくりを目指しています。また、バリアフリーツアーセンターの設立など、より広い視点での社会貢献も考えています。
「ぐるぐるの森」でお話をききました。山内まどかさん、ありがとうございました! お話はpodcast「青空駅伝」でもお伝えしていきます。
他県での支援、いろいろなかたち
行政が、「認証」という形を通じてトータル支援を行う長野県の「信州型フリースクール認証制度」は、子どもたちの多様なニーズに応える画期的な取り組みとして注目を集めています。
まず大きな特徴だと感じたのは、「出席扱いとなる利用児童生徒がいることは原則問わない」ということ。フリースクールに通う際、子どもが在籍している学校が「出席扱いと認めるかどうか」を判断します。前のトピックでもお伝えしましたが、フリースクールごとにカリキュラムはさまざま。教育の視点から見ると、出席扱いかどうかというのがフリースクールの評価に大きいウェイトを占めますが、長野県では、出席についてはフリースクールだけでは解決できないケースも多いことを考慮して「子どもの心の居場所として機能しているかどうか」という福祉の視点から、フリースクールへの補助がなされています。
そして、このフリースクールへの取り組みを管轄しているのが「教育委員会ではない」という点もポイントです。「長野県 県民文化部 こども若者局 次世代サポート課」という福祉分野に近い課が、ポータルサイトの運用なども含めて担当しているのだそう。岩手県もそうですが、教育委員会が主体となっている自治体が多い中で、教育という面からアプローチするのか、福祉という面からアプローチするのか。その違いが取り組みのスピード感や予算などにも影響しているのではないかと思います。
長野のように1歩2歩と先を行っている自治体の事例を学びながら、岩手県でも子どもたちの多様な学びのニーズに応え、地域社会との連携を深め、より良い教育の環境をつくりだしていかなくては…。「学校に行けるようになる」というゴールも一つの目指すところなのかもしれませんが、これからは、子ども一人一人にあった学びの環境を整えていくこと、学びの選択肢を増やしていくこと。そのために岩手県としてどんな取り組みが必要なのか。まどかさんのように日々子どもたちと向き合う現場のみなさんと一緒に、考えていきたいと思います。
※掲載内容は2025年2月時点のものです。
