議会質疑・答弁

Parliament

令和2年12月定例会
「一般質問」

【質問項目】

  1. 1. 新型コロナウイルス感染症対策について

    • (1) 病床の確保状況等と感染ステージについて
      •  ア 病床の確保状況等について
      •  イ 感染ステージについて
    • (2)診療・検査医療機関の設置状況と検査体制について
      •  ア 診療・検査医療機関の設置状況について
      •  イ 検査体制について
    • (3)県民へのメッセージについて
    • (4) 患者やその家族等へのケアについて
    • (5) 保育士等への慰労金について
    • (6) 県の追加支援について
  2. 2. 男女共同参画の推進と子育て支援について

    • (1)いわて女性の活躍促進連携会議の取組の成果について
    • (2)子育て支援サービスの充実について
    • (3)子育て世代包括支援センターの取組について
  3. 3. 教育政策について

    • (1)幼児教育と県の教育政策について
      •  ア 就学前教育・保育施設における教育について
      •  イ 幼児教育からの一貫した人づくりについて
    • (2)高校再編計画について
      •  ア 近隣中学校への影響について
      •  イ 地域住民の合意形成について
  4. 4. 農林業の振興について

    • (1)米政策について
      •  ア 主食用米から非主食用米への転換について
      •  イ 消費・販売拡大に向けた方針について
    • (2)i-woolなどめん羊振興の取組への評価について
    • (3)農林水産物の機能性活用について
    • (4)森林環境教育の推進について
    • (5)森林経営管理制度について
  5. 5. 環境政策について

    • (1)大規模太陽光発電建設抑制について
    • (2)岩手型住宅の普及について
  6. 6. 県営施設のマネジメントについて

1.新型コロナウイルス感染症対策について

 新型コロナウイルス感染症によりかけがえのない命を亡くされた皆様に謹んで哀悼の意を示すとともに、現在も闘病されている皆様の早期回復を願うものであります。また、医療関係者の皆様の献身的なご尽力に心から感謝を申し上げます。世界そして日本各地で第3波が猛威を奮っています。岩手県では7月29日に初めての感染が確認され、11月に入り急速に拡大しています。

(1)病床の確保状況等と感染ステージについて
 県では、療養している人の数に応じて、フェーズを4段階に設定し、病床の体制を整えています。現在はフェーズ2(発生拡大期)の段階ですが、フェーズ3(まん延期)への引き上げも検討していると聞いています。

ア、  病床の確保状況等について
 現在の病床と軽症者等宿泊療養施設の確保と使用状況、また、クラスターも確認されていますが、患者の発生状況をどのように分析しているのか伺います。

答弁
 病床の確保状況等についてでありますが、本県では、新型コロナウイルス感染症が発生していない医療提供体制のフェーズ0の段階から病床150床以上、軽症者等宿泊療養施設を85室確保していたほか、大規模クラスターの発生も想定し、重点医療機関等の指定を行っているところ。
 現在の県内の発生状況を踏まえフェーズ2の段階として、病床を250床以上、宿泊療養施設は85室確保し、運用しているところであり、昨日(11月30日)現在、入院が70床、軽症者等宿泊療養施設が19室の使用状況となっている。
 11月以降、職場や飲食店、高齢者施設でのクラスター等の発生により、県内の患者数は増加しているが、昨日までの病床利用率が28%、宿泊施設の利用が22%となっており、現時点で病床がひっ迫している状況ではないと認識している。
 県では、国で定義する濃厚接触者に限らず、その他の感染が疑われる者まで拡大した積極的疫学調査を実施することにより、感染経路不明な者の割合は全国平均の48%に対し、11%となっており、現時点において、地域における感染の連鎖の封じ込めに向けて対応出来ているものと考えている。

イ、 感染ステージについて
 国では、想定される感染状況をステージⅠからⅣまで設定しています。その感染ステージを判断する指標には様々ありますが、岩手県の場合、一日の感染者数がどの程度続くと、医療をはじめ社会経済に大きな支障が生じ深刻な段階と私たちは捉えるべきなのでしょうか伺います。

答弁
 感染ステージについてでありますが、国の新型コロナウイルス感染症対策分科会では、今後想定される感染状況をステージⅠからⅣの4つの段階に区分し対策を提言しており、現状、本県は「感染者の漸増及び医療提供体制への負荷が蓄積する段階」であるステージⅡにあると判断している。
 感染者が急増した「ステージⅢ」では、新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制への負荷が高まり、一般医療にも大きな支障が発生することを避けるための対応が必要な段階とされており、具体的には、夜間や酒類を提供する飲食店への外出自粛の要請、イベント開催の見直し、人が集中する観光地の施設等における入場制限等を検討することが必要とされているところ。
 ステージの判断については、病床利用率やPCR陽性率など複数の指標を目安として総合的に判断するものであるが、ステージⅢへの移行を判断する指標の1つとして、直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数が15人という数値が示されているところ。
 これは本県においては1日26人の新規感染の確認が1週間続くという状況であり、この指標の動向等も踏まえ、感染拡大を抑制するため社会への協力要請を検討することとしている。

(2) 診療・検査医療機関の設置状況と検査体制について
 コロナ対応と通常医療の両立を図ることが重要ですが、今後懸念される新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行に備え、11月1日から、発熱患者らの相談や診療、検査の仕組みが変わりました。インフルエンザとコロナの症状の見分けが難しく、両方を検査できる診療・検査医療機関として県内212機関を指定済みと伺っています。

ア、  診療・検査医療機関の設置状況について
 診療・検査医療機関の現在の設置状況について、各市町村や地域間での受診環境に偏りがないか、十分であるか、課題も伺います。

答弁
 診療・検査医療機関の設置状況についてであるが、診療・検査医療機関については、国が示した計算式により本県の季節性インフルエンザのピーク時の1日あたり需要数から試算し、来年1月までに県全体で217医療機関の指定を目指しているところであり、現時点で212機関の指定が完了したところ。
 その指定に当たっては、医師会や地域の医療機関等と十分に協議を行い、地域バランス等を含め、各地域の実情に応じた診療・検査体制について調整を図っているものである。
 また、その設置に当たっては、医療機関から「感染防止対策」や「検体採取の方法」及び「国が設置に当たり義務付けている感染症情報の入力システム(G-MIS)の操作」等の課題が挙げられたが、県医師会と連携し、各圏域での医療従事者を対象とした国の指針や運用マニュアル等の周知、模擬操作の研修会の開催により、現在は円滑な運用が図られていると認識している。
現時点では、季節性インフルエンザの流行は始まっていないところであるが、今後のインフルエンザ及び新型コロナウイルス感染症の県内流行の動向を注視しながら、適切な受診について県民への周知に努めていく。

イ、  検査体制について
 厚生労働省の発表では、岩手県のピーク時の検査需要は一日4,292件とされていますが、検査体制は確保されているか伺います。

答弁
 検査体制についてであるが、議員御指摘のとおり、本県の季節性インフルエンザ流行ピーク時における検査需要見通しは、一日最大4,292件であり、そのうち、新型コロナウイルス感染症のPCR等検査需要は一日444件、インフルエンザ流行に伴う発熱患者等の検査需要は一日3,848件を見込んでいる。
 これに対して、現時点では県全体で、新型コロナウイルス感染症に対応するPCR等検査については一日987件、インフルエンザに対応する抗原定性検査については一日4,240件の検査に対応する体制となっており、本県のピーク時の検査需要に対応できるものと考えている。

(3) 県民へのメッセージについて
 岩手県内において、飲食や職場でのクラスターが確認されたことに加え、高齢者施設でのクラスターも確認され、今後、県内全域における家庭内感染や、学校等におけるクラスターの発生リスクが高まってくると危惧されています。
 知事は11月24日、県民に対してメッセージを出されました。改めて感染対策を徹底していただくことが重要ではあると思いますが、危機感が伝わってはきませんでした。本県で初めての死亡事例が発生した後のメッセージとしては、もう少し強いメッセージが必要だったのではないかとも感じています。これから年末年始を迎える中で、そこからの2週間なのか1か月なのかが大事な時期であると感じていたところです。
 医療提供体制がひっ迫することのないよう、いま私たち県民は何をすべきなのか、何を我慢すべきか。正しく恐れるための県民へ訴えるメッセージのあり方について、感染者ゼロという日がなかなか出ない中、知事のリーダーシップが問われると思いますが、ご所見を伺います。

答弁
 県民へのメッセージについてでありますが、県内で盛岡市を中心に職場や飲食店におけるクラスターが複数確認されたことから、11月19日に「岩手県・盛岡市共同臨時記者会見」を実施し、店舗利用者に検査を受けるようクラスター対策への協力と三密を伴う会合等の回避など、感染増加を踏まえた感染対策の徹底について呼びかけたところ。
 また、11月24日には、高齢者施設でのクラスターも確認され、今後、県内全域における家庭内感染や、学校等におけるクラスターの発生のリスクが高まってくると危惧されることから、同日に新型コロナウイルス感染症対策本部員会議を開催し、基本的な感染対策の実施に加え、毎日の健康確認や体調不良時の外出自粛など感染対策に係る知事メッセージを発したところ。
 今後においても、感染状況を踏まえ、必要な感染防止対策を行うとともに、引き続き県民の皆様に対して、家庭や職場を含むすべての場における基本的な感染対策が確実に実践されるようメッセージを発していく。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。

追加質問
 現在の確保病床の使用率は28%で、政府の分科会がステージ3の指標とする25%以上となっている。一方、ステージ3を判断する様々な指標を踏まえた上で、様々な状況を見ながら判断するかと思うが、ステージ3に当たるかどうかの判断は自治体に委ねられており、しっかり判断していただきたい。
 去る11月25日の国の分科会において、ステージ3に当てはまらなくても、十分な対策ができていない地域があるとすると考えるなら、早急に判断するよう都道府県に促したとなっている。
 県内の圏域ごとの医療提供体制に差が出てきている状況であり、県立病院は応援派遣で成り立っている。県内でステージ3に相当しなくても、危機感を感じなければならない。今後、知事が必要に応じ、県民にメッセージを発信すると思うが、やはり高齢者への拡大防止、経済を回すため、いったん慎重な行動、確実な対応が求められる気がする。県民の不安解消のため、知事には情報発信に努めてほしいが、改めて、ステージの考え方も踏まえた、知事から県民への情報発信の考え方についてお聞きしたい。

答弁
 先ほど保健福祉部長が答弁したように、ステージⅢの状況となると夜間や酒類を提供する飲食店への外出自粛の要請、イベント開催の見直し、人が集中する観光地の施設等における入場制限等を検討することが必要とされているが、本県においては現時点でこのような状況に至っていないと判断している。
 一方、基本的な感染対策である、マスクの着用や手洗い、三密の回避などについて、この11月に入ってから発生している様々なクラスターの分析を見ると、しっかりと行われていないが故に感染が拡大したという例があったことから、このような点については、特に繰り返しメッセージを出したところ。
 また、このメッセージの内容は、それぞれ県の担当部局から関係する団体や企業等に伝わるようにしており、是非、県民の皆さまにはこのメッセージに留意して感染対策に努めて欲しい。

追加質問
 そのメッセージの発し方だが、年末年始を迎える中、これまでの知事の記者会見から、今のところ、言及されていないが、しっかり県民に分かりやすく発していただきたいし、さきほど1日26人が1週間程度続くと、大変な状況になることをお話しされたところ。全国各地で、何人の感染が発生している情報を毎日聞いていると、どれが本県、私たちでは、どれ位の人数が増えているのがわかりづらい。圏域ごとで、状況が違うということもより詳しく発信していただきたい。ぜひ、知事におかれては、メッセージを発する際には、より具体的に県内の状況についても、発信していただきたい。

(4) 患者やその家族等へのケアについて 
 コロナは誰もが感染する可能性があり、誰でも感染させる可能性があります。患者やその家族など、感染した際には、職場への対応のこと、学校への対応のこと、ご近所さんへの対応のことなど、自身の健康状態のみならず、日常生活全般の様々な不安や心配事を抱えているのではとも想像します。友人などにも話しづらい状況がある中、患者やその家族等へのケアを行える相談窓口など退院後も含めて必要と考えますが、県の見解を伺います。

答弁
 新型コロナウイルス感染症患者やその家族等へのケアについてでありますが、新型コロナウイルス感染症については、後遺症が残ることなどが指摘されており、退院後においても健康面での支援が重要と認識しています。
 また、議員御指摘のとおり、患者やその家族は、健康面のみならず、生活面でも様々な不安や心配事を抱えていると考えられることから、管轄保健所において、退院後、生活指導や相談対応を行っているほか、岩手県精神保健福祉センターに相談員を新たに配置し、県民の不安やストレスの軽減、精神疾患の発症予防に努めているところです。

(5) 保育士等への慰労金について
 政府は医療従事者や介護施設、障害福祉施設の職員に慰労金を給付しましたが、保育士など児童福祉関係の施設の職員は給付の対象から外れました。この方々は、介護職と同様に、子ども達や自身の感染防止に努めながら勤務を続けてくださっており、独自の慰労金を支給する自治体が増えています。
 4月の緊急事態宣言発令時、学校の休業措置があった中で、保育所は閉鎖せず、感染リスクがゼロではない中、子ども達の居場所を確保していただきました。本県において、保育士が不足する中、保育の現場を支えていただいている方々を慰労するため、本県も配慮が必要と考えます。
 先日、県に対する要望調査で市町村周りをした際、同様の主旨の要望がありました。本来は国の役割であると認識していますが、本県も保育士等への慰労金の給付について検討していただきたいと考えますが、県の見解を伺います。

答弁
 保育士等への慰労金についてでございますが、全国的に新型コロナウイルス感染症が拡大する中にあって、子どもとの直接的な接触が避けられない職場で、社会機能を維持するための業務を継続していただいている保育士等への慰労金の支給については、政府が給付することとした医療従事者等と同様に、国の財源により国全体のスキームで行われることが望ましいと考えております。
 県といたしましては、本年6月及び11月に全国知事会、7月には日本創生のための将来世代応援知事同盟を通じまして、感染の不安を抱えながらも勤務を継続している保育士等に対し、慰労金の支給も含む処遇改善等の取組を進めるよう、国に対して要望しているところでございますが、今後も機会を捉えまして国に働きかけてまいりたいと考えております。

(6) 県の追加支援について
 コロナの感染拡大により、特に女性の生命と生活が脅かされています。女性就業者数が多いサービス産業等が受けた打撃は極めて大きく、厳しい状況にあります。DVや性暴力の増加・深刻化、予期せぬ妊娠の増加が懸念され、10 月の女性の自殺者数は前年から8割も増えました。生活困窮に陥っているシングルマザーも多くいます。内閣府の研究会は「女性不況」とも言える状況だと表現しており、本県においても注視して頂きたいと思っております。
 新型コロナウイルスの第3波は、Go To事業で利用客が徐々に戻り始め、年末年始の書き入れ時に向けてさらなる回復を期待していた飲食業や観光業をふたたび直撃しています。
 知事は、去る11月25日の記者会見において、新型コロナウイルスで打撃を受けている飲食店への対応について聞かれた際に、「追加的支援を検討すべき状況である」とお答えしています。
 追加支援の具体的な時期や内容について、知事に伺います。

答弁
 県の追加支援についてでありますが、県内において、飲食店でのクラスターが確認されるなど、複数の感染事例が確認されており、今後、感染を危惧する県民が外出や会食を控えることなどにより、特に飲食業は、より厳しい状況におかれる可能性があるものと認識している。
 県は、困窮している事業者の事業継続と雇用維持に向けて、国に対して持続化給付金の複数回の給付や雇用調整助成金の特例措置の延長などを要望してきたところであり、雇用調整助成金については、令和3年2月末まで特例措置が延長されたところ。
 県としては、県独自の支援策として、事業者の固定費負担を軽減する家賃支援について検討しており、実施に向けて、市町村や商工指導団体と調整を進めております。

追加質問
 家賃支援を検討中ということであるが、これは、年末年始の前に対応すべきもので、スピード感が大事なもの。早く県で実現しないと、市町村の対応が遅れる。実際に民間の方に配るのが遅れるということになる。具体的な時期はいつごろになるか。

答弁
 今回の家賃支援については、今、市町村、商工団体と調整中であり、1月から3月までの家賃に充当できるよう考えているところ。市町村と調整し、できる限り早く事業者に交付できるよう努める。

追加質問
 雇用調整助成金は、2月まで延長されるが、解雇通告は、1か月前にしなければならないので、経営者には、そういうことを踏まえ、判断しなければならないこともある。家賃補助を含めた事業者支援は早いうちにやらなければならない。具体的な時期としては、年内なのかという限定は無かったが、ぜひ、ここは、スピード感をもって、早急に対応していただきたい。

2. 男女共同参画の推進と子育て支援について

(1) いわて女性の活躍促進連携会議の取組の成果について
 新しい「いわて男女共同参画プラン」の素案が今定例会に提出されました。新たに、ダブルケア対策、LGBT支援、SNSを通じた暴力被害の防止など言及されたことは、大変評価します。
 男女共同参画をめぐる社会情勢の変化への課題の一つに人口減少対策があります。子育ての負担や仕事と育児や家庭の両立の困難さを解消することが必要だということは、県も認識されています。
 今年6月の一般質問での私の質問に知事は、「いわゆるM字カーブの底が浅くなり、いわて子育てにやさしい企業等認証制度の延べ認証企業数は32社から148社まで増加するなど、仕事と子育てを両立しやすい環境が整ってきている」とご答弁されました。知事の仰るとおり県民は仕事と子育てを両立しやすいと感じているのでしょうか。確かに環境整備は進んではいますが、こんな緩やかなスピードで良いのでしょうか。
 「家庭生活または社会活動と仕事を両立しているか」との県の意識調査では、男女とも理想と現実には依然として差があることが解っています。現プランの参考となった平成27年度と次期プランの参考になっている平成30年度の意識調査を比較すると、「両立している」との回答は、女性は19.0%から17.2%に、男性は20.7%から14.7%へいずれも減少しています。この調査結果では、男女ともに両立できている人が減っているのではないでしょうか。
 県は、平成26年に「いわて女性の活躍促進連携会議」を設置し、防災・子育て支援・女性の就業促進・農山漁村・建設の5部会を設けて取組を進めてきましたが、この連携会議での提言等はどう施策に反映され、何が成果なのか伺います。今年産学官連携サテライトミーティングが設置されましたが、新たに何に取り組むのか知事に伺います。

答弁
 県では、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の制定など国の取組に先駆けて、平成26年度に官民一体となって「いわて女性の活躍促進連携会議」を立ち上げ、平成29年度には5部会を設置して、分野ごとに意見交換や現地調査、研修会などの取組を進めてきた。
 その結果、例えば、
・ 防災分野では、消防団のほぼすべてに女性団員が所属し、女性団員数も増加していること。
・ 農林水産分野では、女性グループが結成され、規格外の農産物を活用した加工品開発など、高付加価値化や経営力向上の取組が進んでいること。
・ 建設分野では、いわて女性活躍認定企業数や、子育てにやさしい認証企業数が増加し、女性が働きやすい環境整備が進んでいること。
などが現れてきている。
 また、今年度設置した「産学官連携サテライトミーティング」は、県内の産業界、大学、市町村の若手メンバーを構成員とし、女性の意識改革や人材育成のあり方、企業風土とトップの意識改革、ワーク・ライフ・バランスの推進などをテーマとして、情報共有や意見交換を行い、交流を深めることとしており、女性活躍に関わる活動が広がっていくことを期待している。
 引き続き、こうした本県独自の取組を通じて、様々な分野において女性が持てる能力をより一層発揮し、活躍できる環境の整備に努めていく。

追加質問
 「女性活躍」を看板政策とした前政権で女性の就業率は70%まで上昇したが、その半数以上が不安定な非正規雇用である。「2020年度までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」との目標は先送りされ、ジェンダー格差も埋まらなかった。コロナ危機で不平等を深める結果を招いたといえます。県内では、様々な調査でも、管理職に対する意識がそこまでないというデータが出ているが、私は、管理職意向がないからといって、成長意欲が低いわけではないと思う。成長意欲がある女性が管理職を目指すには、旧来の管理職のあり方を見直すことが大事だと思っている。女性も管理職として、働きやすい環境を整備することが必要なのではないかと思っている。今回のコロナ禍において、テレワークによって時間や場所にとらわれない働き方が浸透しつつある中で、コロナ禍で浮き彫りになった女性の働き方の変化と可能性についても、今後しっかり見ていく必要がある。
 先ほどの知事の答弁で、今回の新たなに設置する産学官連携ミーティングについては、今日コロナを踏まえた上での女性活躍を含めたものが必要になってくると思うが、その件について御所見を伺う。

答弁
 産学官連携サテライトミーティングのコロナに関係する取組についてだが、ミーティングの設置目的は、先ほど知事が申し上げたとおり、これまで5部会の取組に共通する取組を横ぐしで、共通した部分を連携して課題を解決するという役割がある。
 コロナ時代の女性を取り巻く環境データなどを取集するとともに、異分野の業種、産業、学術、そして、官、市町村にも入っていただいているので、そういった女性の方々の共通の課題の意見を伺うことで、対応する施策などを検討することができればと考えているところ。

追加質問
 これまで設置されたものに、プラスするものなので、期待するものであるが、これまでに、私だけでなく、様々な議員が女性活躍の件で議論してきていると認識している。
 女性活躍連携会議の中で、例えば、不妊治療の両立も課題にあったのではないかと思うが、具体的に、今までの会議の中で、この分野、テーマが課題であるということについて、取り組んだ事例があれば、教えてほしい。

答弁
 これまでの部会の中で、取り組んだ事例としては、女性の働きやすい環境の整備ということで、企業における女性の、これまで配属されなかった部署に新たに配属した事例、女性の人材育成のために研修を進めることにより、女性の意識改革や新しいポストの就任を認めるといった事例、そういった様々な取組をしている。

追加質問
 これまでの連携会議と今後設置されることで期待するが、これまで県でやられてきたことが具体的にこういう風になったとかがないので、わかりにくいのが現状である。今年設置されたばかりなので、引き続き、注視させていただく。コロナの関係で、女性の就業率が上がったが、非正規雇用が多いというのが現状の課題であって、そういったことも目を向けて取り組んでほしい。

(2) 子育て支援サービスの充実について
 2020年版男女共同参画白書にて、夫婦共働きが増えているにもかかわらず、妻が家事や育児に充てる時間は夫の2倍と負担が集中している実態が浮き彫りになり、「男性の参画が必要だ」と指摘しています。食品や日用品の在庫を管理する、食事の献立を考えるなど「見えない家事」についても、妻が担う世帯は6~7割となっています。
 女性が過重な家事負担を負うことなく、仕事と家庭生活の両立が可能になるためには、男性の主体的な家庭生活への参画や長時間労働是正等働き方改革の取組を進めることはもちろんですが、男性の啓発には時間もかかり、その間に子育て期間もどんどん経過していきます。私は、ひとり親世帯も考慮して、家事負担軽減の外部サービスが必要だと感じています。前述の男女共同参画白書の中でも、家事支援など外部サービスの活用も重要だとしています。他県では、子どもの預かりや家事代行、保健サービスなどに使えるチケットを発行し、特に小さい子どものいる世帯を応援する自治体もあります。子育てにやさしい企業を増やす取組も重要ですが、育児に専念したいため働いていない親もおり、社会生活における子育ての負担軽減策をぜひ研究していただきたいです。
 平成30年度に実施した「女性活躍促進に関するアンケート」において、「女性の能力発揮のためにあれば良い行政施策」について聞いたところ、「保育等の子育て支援サービスの充実」をあげる事業所が約7割あったとあります。保育所等の整備だけでなく、多様な子育て支援サービスを求めているものと考えますが、県では具体的にどのような支援サービスが必要と考え、施策に反映させていくのか伺います。

答弁
 子育て支援サービスの充実についてでありますが、県民が、性別を問わず、仕事、家庭生活、地域活動などに自分の希望するバランスで参画できる社会を実現する上では、仕事と生活を両立できる環境づくりを進めていくことが重要であります。そのためには、地域における多様な保育サービスを更に充実していくことが必要であると認識しています。
 県では、市町村が地域のニーズに応じた子育て支援サービスを提供できるよう、子ども・子育て支援事業支援計画に基づき、認定こども園等の施設整備を推進していくとともに、放課後児童クラブや一時預かり、延長保育を始めとする地域子ども・子育て支援事業の取組を促進し、地域における子育て支援の充実を図っていく考えであります。

追加質問
 これまで答弁いただいたものと変わりない答弁。先ほどの女性活躍の連携会議もそうだが、どういう具体的な支援等が両立できるのかという提言が出てくるはず。そういった議論も出ているのではないかと思う。
 私自身は、それを求めているわけであり、そのための連携会議である。
 商工労働観光部や保健福祉部、環境生活部でやるわけだから、ぜひ、環境生活部で出ている部分が保健福祉部にも降りてきていないのが現状ではないかと思う。
 一時預かりの話があったが、例えば、一時預かりをしてくれるところが減ってきており、特に、仕事をされている女性が預けたいとなった時に、預ける先がない。元々、待機児童を優先して、そこを使うわけだから、先ほど話した提言のとおり多様な保育サービスというのは保育所整備だけではなく、それ以外のところの生活、家事、家庭を応援する仕組みを検討してほしいとお話ししている。そういった提言も、男女共同宣言、内閣府からも外部サービスを含め、取組をしていくということも白書に書いている。もう少し踏み込んだ施策としてほしい。

答弁
 議員からお話しされたとおり一時預かりは、悩みや不安の解消とか交流の場、勤務時間に応じた柔軟なサービス、育児休暇に繋がる、円滑な保育所とか様々なニーズがあるだろうと思う。地域ごとにニーズも異なっており、市町村事業で行っている。
 男女共同参画で課題として出されていることを我々が連携して取り入れる。議員から、他県の事例の紹介があったが、そういったことも、ベンチマークしながら、取り組んでいく。本県それぞれの地域、市町村が主体となってやっている事業も多いことを踏まえ、市町村が地域の実状や課題を適切に捉えて、適切に事業が組み立てられるよう、我々も一緒になって取り組んでいきたいし、必要な支援を行っていきたい。

追加質問
 6月の一般質問で、知事は「30歳、40歳代の本県の出生数、出生率が他県と比較し、高くない」ということも指摘された。30歳、40歳代の出産を支援する施策をできるだけ早く県民に示すようにしたいとおしゃっていた。これを踏まえ、研究してほしい。

(3) 子育て世代包括支援センターの取組について
 女性活躍のための基盤整備の中に、子育て世代包括支援センターの設置促進があります。国では、今年度までの全国展開を目指しています。センターには、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援が求められており、母子健康手帳の交付から新生児訪問、産後ケアや育児相談など、各市町村が地域の実情に応じて事業を行っています。
 医療的ケア児を持つ親等からは、兄妹の障がいの有無で相談窓口が変わることへの負担軽減について求められることも少なくありません。私も本来は障がいのある子どもを含めた支援窓口の一本化が必要ではないかと考えています。
 昨年は、10代女性が自宅トイレで出産した男児を窓から外に投げて殺害してしまった事件、先日はごみ収集車に胎児の遺体が発見されるという痛ましい事件が県内でもありました。子育て世代包括支援センターは、妊娠したら誰でも相談しやすい場所であって欲しいと願います。児童虐待による死亡事例の7割は3歳未満であることから、母子保健から児童福祉への切れ目のない連携も、子育て世代包括支援センターに求められています。
 本県の子育て世代包括支援センターの設置状況、運営の課題と県の支援について伺います。

答弁
 子育て世代包括支援センターの取組についてでありますが、県内では、現在、22市町において設置され、本年度末までに5市町、来年度には3町村が設置を予定しており、30市町村となる見込みであります。
 このセンターを設置している市町村においては、母子保健を中心として、主に、妊娠、出産、子育てに支援が必要な方を対象として、世帯のニーズに応じた支援を行っておりますが、平成29年度に法定化された新しい事業でありますことから、支援ノウハウの蓄積や、児童福祉分野との連携、役割分担が課題であると認識しています。
 県では、保健所による連絡調整会議の開催や、先進自治体の担当者等を講師に招いた研修会などを実施しているところであり、引き続き、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援につながるよう市町村を支援して参ります。

3. 教育政策について

(1)幼児教育と県の教育政策について
 幼児教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものです。
 2006年に全面改正された教育基本法においては、幼児教育の重要性が謳われ、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならないとされ、2007年には、学校教育法の改正や幼稚園教育要領及び保育所保育指針の改訂により、0歳児から小学校以降一貫した流れの中での教育や学びの連続性が明確になることが重要とされました。2018年には、新しい幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領が施行され、小学校学習指導要領にも「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が示されるなど、これまで以上に小学校教育との接続が重要視されています。また、2019年10月には、幼児教育・保育無償化が開始され、就学前教育・保育の質が改めて問われています。

ア、 就学前教育・保育施設における教育について
 一方で、本県における就学前教育・保育施設における教育内容については、「岩手県教育振興計画」では、他県と比較し記述が少なく、また、2005年3月に策定された「いわて幼児教育振興プログラム」はその後更新がなされていませんが、この間どのような取組がなされてきたのか伺います。

答弁
 幼児期の教育は、「幼児期にふさわしい生活」、「遊びを通しての総合的な指導」、「一人一人の特性に応じた指導」を通して行う人格形成の基礎づくりとして重要であると考えている。
 県教育委員会では、平成17年策定の「いわて幼児教育振興プログラム」及び平成22年策定の「岩手の教育振興」が目指す幼児教育や震災からの学びの場の復興を踏まえつつ、園長等を対象にした研修会や幼児教育と小学校教育との円滑な接続に向けた研修会の実施等により幼児教育の推進を図ってきたところ。
 また、平成27年度からの「子ども・子育て支援新制度」、平成29年の幼稚園教育要領等の改訂、令和元年10月からの幼児教育・保育無償化、そして認定こども園の増加など、幼児教育を取り巻く社会の変化に対応しつつ、幼稚園、認定こども園、保育所の施設類型に捉われず、幼児教育の充実について取り組んできたところ。

イ、 幼児教育からの一貫した人づくりについて
 また、個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成が必要であると判断されている幼児の数は増加傾向にあります。障がいのある幼児や医療的ケアを必要とする幼児については、将来的な自立と社会参加を見据えた一人一人の教育的ニーズを把握した早期発見・早期支援が重要であり、幼児教育の段階から関係機関・部局と連携する、切れ目のない支援体制が重要であると私は考えています。
 さらに、これからの社会を生き抜く次世代を育成するためには、子どもの主体性や協調性、自己肯定感等いわゆる「非認知的能力(生きる力)」を育むことが求められています。非認知能力を高めるためには「遊び」や「自然体験」が有効と言われていますが、本県においても、豊かな自然環境を積極的に生かして幼児教育を実践し、充実していくことが重要と私は考えます。
 就学前の幼児教育から一貫した人づくりや学びのプログラムが岩手県の教育政策に必要であり、そのような観点から、令和4年度に、本県も幼児教育センターを設置することにした事は評価しておりますが、幼児教育からの一貫した人づくりについて、今後どのように教育政策を展開していこうとするのか、県の所感を伺います。

答弁
 幼児教育からの一貫した人づくりについてですが、県教育委員会では、令和4年度に幼児教育センターを開設することとしており、センターを中核として幼児教育に関して一体的な推進体制の構築を目指しているところ。
 幼児教育センターでは、質の高い教育が行われるよう教員研修体系を整備し、幼児教育のどの施設類型においても、自然や施設の特徴など幼児を取り巻く環境や、人との主体的な関わり、心を動かされる体験や遊びによる教育・保育が行われるよう各施設に働きかけ、人材の育成に努めていく考え。
 また、幼児教育と小学校教育の円滑な接続のため、幼児教育施設の教員等と小学校教員とが共に学び合う研修会により、それぞれの教育の特徴を理解し、幼小接続や小学校低学年における効果的な指導の在り方について周知、啓発に取り組んでいく考え。
 このため、幼児教育関係各室課及び関係団体等との一層の連携が必要であることから、幼児教育の重要性やその質の保障について共通理解を深めながら、「いわて幼児教育振興プログラム」の改訂と併せて、幼児教育センターの設置に向け取組を推進していく。

(2) 高校再編計画について
 県立高校の再編計画が検討されていますが、県内市町村や地域住民から再編に対する様々な要望が出ています。盛岡南高校と不来方高校の統合については、盛岡市教育委員会から県教育委員会に対し、2回の要望が出ています。また、盛岡南高校の存続を願う会からは、白紙撤回を求める1万2580人分の署名が提出されました。県では、中学校卒業者数の減少が進む中、生徒にとってより良い教育環境の整備のため、将来を見据えまた全県的な視点をもって再編を進めているとしています。県全体の生徒数は減少しますが、盛岡市全体では微減、紫波、矢巾、旧都南地区は横ばいの傾向にあり、盛岡南高校と不来方高校の全生徒数のうち約4割は当該地区からの生徒となっています。

ア、  近隣中学校への影響について
 両校の近隣中学校の生徒の進路や地域への影響について、県はどう認識し、その影響への対策をどう考えているのか伺います。

答弁
 近隣中学校への影響についてですが、受検生は、学校の特色や魅力、将来の進路希望等に応じて志望校を選択していると承知しており、義務教育とは異なり、広い範囲の学区を設けているところ。
 そのため、各学区内において、一部地域の増減はあったとしても、生徒の進学先が広範囲に渡ることを考慮しながら、学区内全体の人数の推移を踏まえ、学びの選択肢を確保しつつ定員等の在り方を判断しているところ。
 盛岡南高校と不来方高校の統合に関しては、盛岡ブロックの中学校卒業生が令和7年度までに190人、5クラス相当の減少が見込まれる中で、これまで以上の学級減に拠らずに、学校配置のバランスを考慮の上、検討したものであり、さらには、盛岡市都南地区、矢巾町、紫波町の生徒においては、両校に限らず、多様な進路に進んでいること等も踏まえたもの。
 両校の統合にあっては、近隣中学校の生徒への影響にも配慮する必要があると考えており、急激な学級減を避けつつ、段階的な調整を図ることとしたところ。

イ、  地域住民の合意形成について
 今年度の各地での地域説明会は、コロナの影響で延期開催されました。盛岡南高校の存続を願う会が署名活動する中で、統合案について初めて知った人も多かったと聞いています。コロナの影響で、地域住民等への説明や議論は十分だと言えないのではないでしょうか。
 また、体育、芸術、外国語等の特色ある教育を実践する学校について、さらに先導的な実践に取り組むことができる教育環境を整備します、とありますが、先導的な実践の具体の提示が薄いように感じます。
 今年度中の再編計画の策定を目指していますが、いったん立ち止まり、再検討も視野に入れるべきではないでしょうか。地域住民の合意形成の時期や期間について、県は妥当と考えているのでしょうか。県の認識を伺います。

答弁
 教育委員会では、後期計画について、令和3年度から令和7年度までを計画期間とすることを示した上で、平成30年12月からこれまで、県内各ブロックにおいて計画策定に向けた地域検討会議、意見交換会の他、要望に応じた説明会、これには盛岡南高校のPTAなどからの要請を受けての開催も含まれるが、延べ67回、約2,100人の参加のもと開催するとともに、パブリック・コメントを実施し、地域の代表の方々のほか、広く県民から県立高校の在り方や後期計画案について意見を伺ってきたところ。
 中学校卒業者数の減少が進む中、それにあわせた高校の在り方への対応は喫緊の課題であり、生徒にとって良い教育環境を整備するという視点からも、遅滞なく後期計画を策定する必要があると考えているところ。
 会議等においては、様々な立場の方々から多様な意見をいただいており、これらの意見を踏まえながら、現在、慎重に検討作業を進めているところであり、年度内の成案策定を考えているところ。

追加質問
 例えば、体育、芸術、外国語に関する特色ある教育を実践する学校について、先導的な取組を進めるということであるが、先ほどの質問でも述べたが、具体的な提言もかなり薄いように感じる。私も、地域説明会に参加させていただいたが、どういう学校になるのか提示がなされない中で、ただただ地域住民にとって、縮小させられていくことは不利益となるような印象を受ける説明会となっている。決特の際にも触れたが、充実した内容、例えば、体育、芸術、外国語があるなら、カリキュラムの充実として、留学ができるとか、外国語教育が増えるとか、有名講師を招くとか具体的な提示がない中では、関係者にとって何が魅力だか伝わらないと思う。
 統合案に対するインセンティブが全くないと感じているが、教育長はどのよう考えるか。

答弁
 両校の統合は、発展的な統合と考えている。大学進学に向けて、文系、理系のほかに、芸術、外国語、スポーツなど多様な学びを確保しながら、各分野の振興に資する人材の育成していくことを目指す。
 学校規模を生かし、生徒が学習活動、部活動など様々な分野、価値観に互いに触れつつ、切磋できる環境を整えることを担っていく。そのことによって、スポーツや芸術活動等において、全国レベルでの実績をさらに上げながら、生徒の多様な進路希望に応え、本県の特色ある教育をけん引する学校になることを期待したい。

4. 農林業の振興について

(1)米政策について
 コメの需給緩和が深刻さを増し、かつてない規模の減産が求められています。県農業再生協議会は、2021年産主食用米の生産目安を20年産の目安より6609トン(2.5%)少ない25万2945トンとし、減少量、減少率とも2015年以降で最大となりました。人口減少や食生活の変化による消費低迷に加え、コロナ禍で外食向けを中心に需要が縮小しています。県は、飼料用米など主食用米以外への転換を進めていますが、飼料用米への転換には人手もかかり、限られた労働力では主食用米に頼らざるを得ない農家もあります。また、主食用米へのこだわりがある中で断腸の思いで一部を飼料用米への転換を行っている農家には、これ以上の転換に限界を感じている農家もあります。飼料用米と主食用米との手取り格差の解消が必要ではないでしょうか。
 また、需要に応じた米生産を進める上で、早い段階で販路を確保する事前契約や企業との複数年契約の必要性も高まっています。福島県は今年7月、複数年契約で飼料用米を生産する農家に助成する独自制度を打ち出し転換を急いでいます。また、青森県、秋田県、宮城県は、事前契約に注力していると聞いています。
 20代、30代の女性にご飯回帰の兆しが見られることが初の農水省の調査で分かりました。5年前と比べ米の消費量が「増えた」と回答した割合が他の年齢層より高くなっています。一方、50代以上では男女とも「減った」の回答が多くありました。米の消費拡大に向けて、消費の変化を捉えた戦略も必要と考えます。

ア、 主食用米から非主食用米への転換について
 本県の主食用米から非主食用米への転換は目標に対してどの程度進んでいるのか伺います。

答弁
 主食用米から非主食用米への転換についてでありますが、国では、行政による主食用米の生産数量目標の配分によらず、国が示す米の需給見通し等を踏まえ、生産者や集荷業者、団体が中心となって需要に応じた米の生産が円滑に行えるよう、平成30年産から、米政策を見直ししたところ。
 本県では、国の米政策の見直しを受け、県や関係機関・団体で構成する岩手県農業再生協議会において、平成30年産から毎年、主食用米の生産目安を決定し需要に応じた米生産を推進してきた。
 こうした取組により、本県の主食用米は、これまで生産目安の範囲内での作付となっており、令和2年産の主食用米の作付は、48,200ヘクタールと、生産目安より約150ヘクタール下回っている。

イ、  消費・販売拡大に向けた方針について
 また、「いわての美味しいお米生産・販売戦略」に基づいた、事前契約や複数年契約の取組や輸出の状況、今後の消費・販売拡大に向けた方針について伺います。

答弁
 今後の消費・販売拡大に向けた方針についてでありますが、県では、これまで「いわての美味しいお米生産・販売戦略」に基づき、高品質・良食味米の生産等による売れる米づくりや、県オリジナル品種のブランド化による県産米の消費拡大や販売促進に取り組んできた。
 これまでの取組により、令和元年産の県産米の事前契約の割合は65パーセントと、全国に比べ13ポイント上回っており、事前契約した数量全てが複数年契約で、その割合は全国に比べ40ポイント上回っている。また、米の輸出量は、令和元年度で約600トンと前年度に比べ、20パーセントの増となっている。
 今後は、新型コロナウイルス感染症の影響により増加している家庭での消費をターゲットに、SNS等を活用しながら、県産米と県産食材を組み合せた美味しい食べ方の情報を発信するなどの取組を一層強化するとともに、これまで築いてきた全国の米卸売業者等のネットワークを生かしながら、お米マイスターのいる米穀専門店や大手通販サイトと連携した販売促進の取組など、県産米の消費と販路の拡大に積極的に取り組んでいく。

(2)i-woolなどめん羊振興の取組への評価について
 県では、中山間地域の活性化策の一つとして、めん羊に関する取組を進めていますが、その中の県産羊毛の利用促進を目指すプロジェクト「i(あい)-wool(ウール)」が2020年度グッドデザイン賞を受賞しました。県内においては奥州市梁川地区で、平成22年に「梁川ひつじ飼育者の会」を設立し、めん羊の放牧による荒廃農地の解消や、羊肉を地域の特産品とし所得の向上を目指した取組が拡がっています。また、一関市下大桑地区では、平成28年に「下大桑ヒツジ飼育者の会」が設立され、羊毛の活用へと取組の裾野が広がりました。食肉用として始まっためん羊放牧は、飼育者とホームスパン作家など様々な分野の人たちが繋がり、県産羊毛を「i-wool」としてブランド化が進んでいます。
 直木賞候補にもなった今年出版された伊吹有喜さんの『雲を紡ぐ』は、ホームスパンの聖地盛岡を舞台とした物語です。まさにこの中でも描かれているいわて盛岡の伝統や文化は、岩手の誇りです。i-woolを含めためん羊プロジェクトについて、ストーリーある素敵な取組を今後も期待しますが、県の評価を伺います。

答弁
 めん羊振興の取組への評価についてでありますが、県では、平成30年度から、国の交付金を活用して「いわての めん羊里山活性化事業」を実施し、「岩手めん羊研究会」を設立したほか、首都圏等でのレストランフェアの開催、本県の伝統工芸品「ホームスパン」とタイアップした、県産羊毛ブランド「i-wool」商品の開発、めん羊飼育者向けの研修などの取組を進めているところ。
 こうした取組により、めん羊に関わる生産、流通、飲食、ホームスパンや観光などの関係者による新たなネットワークが形成され、荒廃農地の解消のほか、首都圏のシェフからも評価の高いラム肉の生産・販売や、県産羊毛を活用したネクタイやマフラー等の商品開発など、めん羊を軸とした活動が進展し、中山間地域の活性化につながっているものと評価している。
 県としては、引き続き、「岩手めん羊研究会」を核とした取組を支援するとともに、めん羊などの特徴ある地域資源を活用した取組の県内への波及に努めていく。

追加質問
 農水省によると1962年以降約60年間にわたり、農地面積の減少が止まらない。農地を維持するため、荒廃化を防ぐことが急務であることから、i-woolの取組は、1つの好事例と思う。
 こういう取組を含め、荒廃農地の解消に積極的に取り組んでほしい。

(3) 農林水産物の機能性活用について 
 今年8月に開催された岩手生物工学研究センター等の主催による「いわて農林水産物機能性活用シンポジウム」に参加しました。そこでは、健康ビッグデータを活用した健康地域社会システムの構築や、食品・化粧品等を中心とするヘルスケア産業の育成など、産学官の連携による取組が紹介されました。
 いわて県民計画の中では、ビッグデータを活用した健康づくり施策の推進について謳っています。今年4月には、医療や健康に関わるヘルスケア産業の拠点となる貸研究施設「ヘルステック・イノベーション・ハブ」が県工業技術センター内に開所する動きもあり、健康づくりの推進と併せて、健康分野の産業振興を幅広く推進するべきと考えています。
 2015(平成27)年に施行された機能性表示食品制度に基づく消費者庁への届け出状況を見ますと、7割が首都圏の企業等による届け出であり、岩手県では3件のみと聞いています。その一つである久慈地域の寒じめほうれんそうは、目の健康維持に効果が期待されるルテインを含む機能性表示食品として、昨年12月から機能性を表示して販売を開始しており、販売単価、販売額ともに増加し、出だしは順調と聞いています。
 産学官連携による農林水産物の機能性活用をさらに進めて欲しいと考えますが、平成29年度に設立された「いわて農林水産物機能性活用研究会」の取組について、これまでの成果と今後の方向性について伺います。

答弁
 農林水産物の機能性の活用については、県産農林水産物の付加価値を高めるための重要な取組の一つと受け止めている。
 このため、本県では、岩手生物工学研究センターにおいて、機能性成分に関する研究や商品化に向けた技術支援に取り組むとともに、大学や企業等を会員とする「いわて農林水産物機能性活用研究会」において、研究成果の情報共有や活用促進を図ってきたところ。
 こうした取組の結果、久慈地域に続き、今年度は八幡平地域の寒じめほうれんそうが機能性表示食品として販売される予定となっているなど、研究成果の活用が広がっている。
 今後も、機能性活用研究会に参画する大学や企業等と連携し、研究や支援ニーズの掘り起し、マッチングを行うなど、機能性を活用した県産農林水産物の付加価値の向上に向けた取組を積極的に進めていく。

(4) 森林環境教育の推進について
 令和3年度以降の第4期の「いわての森林づくり県民税」のあり方について、今定例会に案が示されました。
 第3期までの税収は約102億円となっていますが、「いわて環境の森整備」で事業対象森林の確保が計画どおり進まなかったことから、令和元年度末の基金残高は約23億3千万円で、今後計画的な事業実施の必要があり、民有林の再造林の割合が伐採面積の約4割にとどまっていること、また、児童生徒等への森林学習会については、実施している学校の多くは小規模校で参加人数が限られていること、県民税の認知度が目標70%に対し41%にとどまっていることが課題でありました。これらを踏まえ、環境重視の森林づくりでは、植栽や保育への支援拡充、新たに奥地化している未整備森林の混交林誘導伐などに必要な作業道の整備、気象被害等を受けた森林整備や、獣害から植栽木を守る柵の設置に取り組むこととしたこと、また、森林との共生では、新たに地域の森林づくりの取組をコーディネートできる人材の育成を目指すほか、森林公園等の森林環境教育の拠点機能の強化や、木育の推進や森林環境学習の展開の拡充を図ることとされたことは大変評価します。
 一方、これまで県民税を活用した「森林学習会」や「森の実践ゼミナール」には、幼児を対象とした学習会またはそれを担う人材育成はほとんどなかったのではないでしょうか。県は、令和3年度以降の「いわての森林づくり県民税」(案)で、児童生徒をはじめ広く県民を対象に多様な森林環境学習の機会を提供していくとしていることから、幼児等を対象とした森林学習会を行い、親子で参加してもらうことで、これまでの施策の対象から漏れていた幼児期の森林学習が行え、同時に課題となっている若い世代への県民税の認知度向上にもつながるのではないかと考えています。
 幼児や若い世代も対象として、森林環境教育を推進するべきと考えますが、知事の見解を伺います。

答弁
 豊富で多様な森林を有する本県では、全ての県民が森林から様々な恩恵を受けており、県民の森林に対する理解の醸成を図る森林環境学習は重要な取組と考えている。
 このため、県では、平成20年度以降、いわての森林づくり県民税を活用し、県内全域で森林環境学習の取組を進めてきたところであり、これまで7,000名以上の児童・生徒が学習会に参加し、樹木観察や植樹などの活動を通じて、森林の役割や重要性を学び、理解を深めてきたところ。
 こうした取組に活用している県民税については、事業評価委員会からの提言やパブリックコメント等の意見を踏まえ、令和3年度以降も継続することとし、今議会に条例改正案を提案しているところ。
 引き続き、「環境重視の森林づくり」と「森林との共生」を図るハード・ソフト両面の施策を充実させて展開し、本県の豊かな森林環境を次の世代に良好な状態で引き継いでいけるよう取り組んでいく。
 議員御指摘の森林環境学習の取組については、「森林との共生」に関する重要な施策の一つと位置づけており、令和3年度以降においては、幼児や親世代を含め、これまで以上に幅広い年齢層の県民を対象に、森林との触れ合いや森林の役割等を学ぶ機会を積極的に提供していくとともに、木材の良さや利用の意義を学ぶ木育に繋がる取組も併せて推進していくなど、県民の森林に対する関心を高め、森林環境保全に対する県民の参画と理解が一層進むよう取り組んでいく。

追加質問
 県森林林業会議から、来年度への要望として、緑の少年団の活性化に向けた支援の強化について新しく追加された。近年、児童生徒の減少に伴い、少年団数及び団員数が減少傾向にあるとのこと。令和5年度に本県で開催される全国植樹祭の成功に向けても、子ども達のみどりと親しみ緑を守り育てる活動支援が重要と感じている。
 さらに、来年からは広く事業の対象とするとのことから、積極的に進めて欲しい。

(5)森林経営管理制度について
 木材価格の低迷による森林所有者の経営意欲の低下や所有者不明の森林の増加により、森林の荒廃が進むことが懸念されています。平成31年4月には、森林経営管理法が施行され、経営管理が行われていない森林について、市町村が仲介役となり森林所有者と担い手をつなぐ森林経営管理制度が構築されました。
 また、昨年には、森林環境譲与税の交付が開始され、市町村は譲与税を活用し、間伐や人材育成、木材利用の促進、啓発等の森林整備及びその促進に関する事業を実施することとされています。
 森林経営管理制度の運用に関し、市町村に対する県の支援体制と、市町村における森林環境譲与税を活用した取組状況について伺います。

答弁
 森林経営管理制度についてでありますが、県では、市町村における森林経営管理制度の適切な運用を支援するため、農林水産部内に設置した対策チームが中心となり、森林の所有者や境界の確認方法等について助言を行っているほか、業務の具体的な進め方に関する研修や、市町村が配置する地域林政アドバイザーの養成研修など、全県的な取組を行っている。
 また、現地機関においては、林業普及指導員等の専門職員に加え、現在、配置を進めている森林管理システム構築推進員が、管内各市町村の実情を踏まえた助言や、優良事例の紹介などを行っているほか、地域単位での対策会議を開催し、地域課題の解決に向けて取り組んでいる。
 なお、市町村における森林経営管理制度の取組状況については、現在、森林環境譲与税を活用し、森林所有者への経営意向調査や、管理が不十分な森林を把握するための、航空レーザを活用した森林の現況調査などが進められている。
 今後とも、市町村が、森林環境譲与税を有効に活用しながら、森林経営管理制度をしっかりと運用し、地域の森林を適切に管理していけるよう、市町村の取組状況に応じてきめ細かく支援していく。

5. 環境政策について

 地球温暖化に起因すると考えられる災害等が世界各地で頻発し、気候変動は今や人類共通の課題となっています。岩手県のこの素晴らしい環境を先人たちから引き継いだ私たちは、今を生きる者の責任として、未来を生きる世代のためにも、気候変動対策にしっかりと向き合わなければなりません。そのような中で、昨年11月には温室効果ガスの排出量を「2050年までに実質ゼロ」とする目標を示し、また先の9月定例会では「気象非常事態宣言」をする方針を示されたことは、大変評価するものです。
 その実現には、エネルギーはもとより、建築物や交通を含むインフラ、各種産業活動や日常の生活など社会システム全般において、急速かつ広範囲にわたり脱炭素化を進めることが必要です。ゼロカーボンを達成するためには、私たち一人ひとりの意識や行動の変容、新たな法制度やルールの創設などが必要とされています。

(1)大規模太陽光発電建設抑制について
 メガソーラーパネルの設置は、地域の自然環境、生活環境の破壊や生態系へ大きな影響が出ます。里山や山林から緑をはぎ取って太陽光パネルを並べることが環境保全につながるのでしょうか。再生可能エネルギーの普及は望ましいものの、無秩序に進めば災害の遠因にもなります。県内では遠野市、大船渡市、一関市で、メガソーラー設置を巡って周辺環境への被害や住民の反対が生じています。
 長野県では、大規模ソーラー建設抑制のための市町村マニュアルを策定しました。遠野市では、1ヘクタール以上の大規模メガソーラーの新規立地を基本認めない規制を設けた条例を今年6月に施行しました。
 また、仙台市では、環境アセスメントに森林要件を設け、森林伐採などの影響を抑制する全国初の取組を始めます。
 国では、風力や太陽光発電の利用を増やすため、関連する規制や基準を順次緩和する方針だと11月の報道で知りました。荒廃した農地に太陽光パネルを設けようとする場合、大半の農地の転用を原則認めない農地法や農業振興地域の整備に関する法律が壁になっていますが、そうした場所でも占用許可を得やすくする制度改正を視野に入れていると聞いています。この規制緩和によって、岩手県の素晴らしい田園風景や森林資源が奪われ、防災力も失われかねません。
 今定例会に次期岩手県環境基本計画、地球温暖化対策実行計画の素案が提出されています。これら計画の策定にあたり、本県もメガソーラー設置に関する規制条例などを策定し、自然環境により配慮した形での再生可能エネルギーの導入に取り組んでいただきたいと考えますが、知事のご英断を伺います。

答弁
 「温室効果ガスの排出量の2050年実質ゼロ」を目指すためには、再生可能エネルギーの導入促進は極めて重要でありますが、再生可能エネルギーの発電施設であっても、自然環境に大きな負荷を与えるものや防災上懸念を生じさせるものであってはならないと考えます。
 国においては、大規模な太陽光発電事業の実施に伴う土砂流出や濁水の発生、景観への配慮、動植物の生息・生育環境の悪化などの問題が全国的に顕著化していることなどから、大規模な太陽光発電事業について、令和2年4月1日から環境影響評価法に基づくアセスメントの対象としたところであります。
 県としては、これら国の動向や、太陽光発電施設の建設に当たり、県内でも環境に悪影響を及ぼすケースが発生していることを踏まえ、法アセスメントの施行に合わせ、法よりも厳しい規模要件により、大規模太陽光発電を岩手県環境影響評価条例に基づくアセスメントの対象としたところであります。
 県ではこれまでも、国及び市町村と連携し太陽光発電事業に係る許認可等に適切に対応してきたところでありますが、今後におきましても、関係する法律の改正動向も注視しつつ、条例アセスメントを適切に運用しながら、環境との調和に配慮した再生可能エネルギーの導入を図って参ります。

(2)岩手型住宅の普及について
 これまでの取組では、家庭部門の二酸化炭素抑制が進んでいません。家庭での主な排出源は、家電等使用による電力消費と冬場の暖房による灯油消費で、電力と灯油で家庭部門全体の約83%を占めています。電力や暖房燃料の消費を抑えるため、省エネ住宅の普及や高効率機器等の導入に積極的に取り組んでいく必要があると県は認識しています。
 温室効果ガス排出量の削減を図るため、住宅・建築物の省エネルギー対策の強化を目的とした「改正建築物省エネ法」が2019年5月に公布されました。県では、一定の省エネ性能を備え、県産木材や木質バイオマスエネルギーを活用した「岩手型住宅」の普及を図っています。
 一方で、「岩手型住宅」の取組が広く県民に知られていないと感じており、また、「岩手型住宅」がこれまでにどの程度県内に建てられたのかの情報もなく、これでは取組の評価ができないのではないでしょうか。今後、「岩手型住宅」をどのように普及していくのか伺います。 

答弁
 岩手型住宅の普及についてでありますが、岩手型住宅の普及状況については、岩手型住宅の推進に賛同する事業者92者に対して先月アンケート調査を行い、現時点までに回答いただいた31者の実績をまとめますと、令和元年度に着工した229戸のうち52戸、23%が岩手型住宅となっていることを把握したところでございます。
 県としましては、改正建築物省エネ法の趣旨を踏まえ、岩手型住宅のさらなる普及が必要と認識しており、今後は、各種イベントなど様々な機会を活用するなど、県民の皆様に知っていただく取組を充実していくとともに、賛同事業者から普及していくうえでの課題を把握するといった取組も行うこととし、岩手型住宅の普及を進めて参ります。

6.  県営施設のマネジメントについて  

 県では、平成28年3月に公共施設等総合管理計画を策定し、公共施設のマネジメントに取り組んでいます。公共施設の老朽化問題を解決するには、建替えや改修、修繕が必要になり、長期的に財源を捻出し続けるため、既存施設の運営を大幅に見直すことも必要となります。
 県は11月、県営運動公園陸上競技場や県民の森など県の8施設について、ネーミングライツ取得を希望する企業団体の募集を始めました。新たな財源を確保し、施設の維持管理や魅力向上につなげる一つの手法だと認識しています。
 財源確保の取組には、「施設使用料の見直し」「資産の有効活用」「維持管理業務の見直し」「PPP/PFIの推進」「基金の活用」などの手法があります。
 盛岡市では、「もりおかPPPプラットフォーム」を設置し、大規模改修や、県内初のPark-PFIとなった盛岡駅前の北上川沿いにある木伏緑地をはじめとする公園の再整備、バスセンター、動物公園、県と共同の野球場などの案件の更新等を進めています。
 私は家族で花巻広域公園や御所湖広域公園をよく利用します。遊具について、木材の腐朽、鋼材の腐食が進行し安全性が損なわれているため、早急な対応が必要等、県の個別施設計画内にも記載があります。
 本県の県営施設のマネジメントの方向性について伺います。

答弁
 県では、「岩手県公共施設等総合管理計画」に基づき、令和2年度中に県庁舎やインフラ施設などの個別施設計画を策定することとしている。
 これらの計画に基づく県営施設のマネジメントに当たっては、計画的な維持管理と長寿命化を推進し、修繕・更新等に要する中長期的なコストを縮減、財政負担を平準化するとともに、人口動態等の変化に対応した施設規模や配置・機能等を適正化するほか、定期的な点検・診断などにより公共施設の安全安心を確保し、ネーミングライツの実施などの県有資産の活用による収入確保に取り組む必要があると認識している。
 また、PPPやPFIの推進といった民間活力の導入については、これまでも、いわて第2クリーンセンターの整備など一定の実績があるところであり、今後も民間との協働を進めながら公共施設のマネジメントに取り組んでいく。

令和2年6月定例会
「一般質問」

【質問項目】

  1. 1. 新型コロナウイルス感染症対策について

    • (1)新型コロナウイルス感染症における医療提供体制について
    • (2)新型コロナウイルス感染症の観光業等への影響と観光振興について
    • (3)ポストコロナ時代を踏まえたいわて県民計画について
  2. 2.子どもを生み育てやすい環境づくりについて

    • (1)子どもを生み育てやすい環境づくりについて
    • (2)周産期医療体制の充実について
    • (3)産科医の確保対策について
      •  ア 産科医確保のための施策について
      •  イ 助産師の育成・確保について
    • (4)医学部を目指す高校生へのキャリア教育支援について
    • (5)妊産婦へのアクセス支援について
    • (6)産後ケアの取組について
      •  ア 妊産婦のオンライン相談について
      •  イ 産後ケアについて
    • (7)妊産婦への医療費助成について
    • (8)多様な保育サービスの提供について
    • (9)多胎児家庭への支援について
    • (10)妊孕性(にんようせい)温存治療への支援について
  3. 3. 移住促進と雇用対策について

    • (1)地方への移住の促進について
    • (2)若年女性の就業促進について
  4. 4. 男女共同参画社会の実現について

    • (1)男女共同参画の取組について
      •  ア 男女共同参画の取組について
      •  イ 「いわて男女共同参画プラン」の達成状況等について
    • (2)LGBTの理解促進に向けた取組について
  5. 5. 農林水産業の振興について

    • (1)家族農業への支援について
    • (2)農林水産分野の食品廃棄物削減の取組について
    • (3)いわての森林づくり県民税の活用について
  6. 6. 教育政策について

    • (1)GIGAスクール構想について
  7. 7.文化芸術を生かした魅力あるまちづくりについて

1.新型コロナウイルス感染症対策について

 新型コロナウイルス感染症への緊急事態宣言が5月25日に約1か月半ぶりに全面解除されました。まずは、かけがえのない命を亡くされた皆様に謹んで哀悼の意を示すとともに、現在も闘病されている皆様の早期のご回復を願うものであります。また、医療従事者の献身的なご尽力、外出や営業自粛をはじめとする県民や事業者の皆様のご協力にも心から感謝申し上げます。
 今後は、次の感染の波を抑止しつつ、社会経済活動を段階的に引き上げていく新たなステージに入りました。しかし、以前の社会に元通りということではなく、コロナを乗り越え新しい時代いわゆるポストコロナ時代を創っていくことになります。

(1)新型コロナウイルス感染症における医療提供体制について
 徹底した「感染予防」と「社会経済活動の段階的な再開」を両立させるために、まずは、感染者の早期発見・追跡・入院治療を可能とする検査・医療提供体制の構築が重要となります。
 6月19日からステップ2へ移行し、県をまたぐ移動も可能となり、今後さらに人の往来再開も見込まれる中、今後のPCR検査と抗原検査などの新しい検査の活用策、地域外来・検査センターの設置、無症状軽症者を含めた患者の確実な受け入れ・医療提供体制が現在どこまで整っているのか、今後の見込みについても伺います。

答弁
 新型コロナウイルス感染症における医療提供体制についてでありますが、検査体制については、現在5医療圏で設置している地域外来・検査センターを、7月中に全ての医療圏において設置する方向で検討を進めているほか、唾液によるPCR検査や抗原検査など、検査体制の充実を図っているところです。
 病床の確保についても、簡易陰圧装置等の整備による感染症対応の病床確保を進めているほか、重点医療機関の設置について検討しているところです。
 また、軽症者等が療養する施設として、県内に1施設、85室を確保しており、合計300室の確保に向け、調整を進めています。
 6月19日に、国からの事務連絡で3月、4月の国内流行状況を踏まえた新たな流行シナリオが示されたことから、本県における医療体制について改めて精査し、次なる波に備えた医療体制の充実に努めてまいります。

(2)新型コロナウイルス感染症の観光業等への影響と観光振興について
 7月10日からステップ3へ、8月以降は観光も可能となります。ステップ2へ移行した6月19日、いわて観光キャンペーン推進協議会で「いわての観光リスタートセレモニー」が開催され、『いわての新しい観光宣言』がなされました。観光業の方からは、県内経済特に飲食業が盛り上がらないと観光業なんて盛り上がらないとの話も頂いています。今後、更なる支援が必要と考えますが、知事は、県内の宿泊業をはじめとする観光関連産業への影響についてどう捉え、今後、どのような支援を行っていくのか。また、観光振興は、県をまたぐものを含めて徐々にとありますが、「新しい観光」とは具体的にどのようなものでしょうか。

答弁
 新型コロナウイルス感染症の観光産業等への影響と支援についてでありますが、商工指導団体と連携し実施している経営状況調査によると、直近5月の売上について、前年同月と比較して、「41%以上の減少」と回答した事業者の割合は、宿泊業が95%、飲食業が69%、運輸業が64%となっていました。観光関連産業を中心に、大きな影響が生じていると認識しているところであります。
 県では、3年間無利子とするとともに、保証料を全額補給する「新型コロナウイルス感染症対応資金」の貸付や家賃補助など中小企業への支援策に加え、先の令和2年度第3号補正予算において、感染症対策に必要な設備の整備等への支援や宿泊業者が実施する生産性向上等の取組に対する支援金のほか、県内宿泊需要の喚起のための宿泊助成制度を設けたところであります。
 また、「いわての新しい観光」についてでありますが、まずは、宿泊施設や観光施設等が、県内外の観光客とお互いに配慮し合い、一緒に感染症対策に取り組んでいくこと。次に、本県の誇りとする豊かな自然、歴史、文化をはじめ、おもてなしの心を基本とする受入れ態勢など、変わらない岩手の良さを磨き上げるとともに、ワーケーションやテレワークなど新たな生活様式に配慮した取組を進めていくこと。さらには、県内外の皆様、特に地元や近隣県の皆様にも、これまで以上に楽しんでいただき、高く評価していただけるよう、観光コンテンツや宿泊施設の魅力や価値を一層高め、将来にわたり持続可能な岩手の観光を作り上げていくものであります。

(3)ポストコロナ時代を踏まえたいわて県民計画について
 知事は、先日、国の省庁に対する来年度予算に関する要望提案活動を、インターネットを活用してリモートで行われました。『新型コロナウイルス感染症対策に正面から向き合う事で、いわて県民計画の目標や各省庁の政策目的に向かっていけるというビジョンを共有できたと思います。』とTwitterに掲載してありました。
 ポストコロナ時代において、いわて県民計画の中で加速して取り組まなくてはいけない部分、追加しなくてはいけない部分も出てきたのではと思いますが、メリハリをつけて計画を進めるべきではないでしょうか。

答弁
 県民計画の取組についてでありますが、県民計画に掲げる様々な取組については、新型コロナウイルス感染症の発生を踏まえ、今後、感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立に向けて、臨機に対応することが重要と考えます。
 具体的には、全国的な更なる感染拡大に備えて医療提供体制の強化を図りながら、
・タブレット端末等の前倒し整備を生かした「学びの改革プロジェクト」の展開
・テレワークや在宅勤務など多様な働き方の進展による関係人口の創出
・拡大や、移住・定住の更なる推進を通じた東京一極集中の是正
などの取組を加速していく必要があると考えております。
 このように、本県のコロナ感染症対策は、県民計画と目指す方向を一にするものであり、県民計画に掲げる「お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」の実現に向け、進む方向には揺るぎがないことを心に留めながら、計画を推進して参ります。

2.子どもを生み育てやすい環境づくりについて

(1)子どもを生み育てやすい環境づくりについて
 仕事と育児の両立の難しさや経済不安で、結婚や出産をためらう人は多いのが現状です。コロナ禍による景気や雇用の情勢悪化が続くと傾向はさらに加速する恐れもあります。厚生労働省の人口動態統計によると、昨年の出生数は86万5千人余で統計開始以来最少を記録しました。合計特殊出生率も1.36となり、前年から0.06ポイント低下し、岩手県では平成30年の1.41から1.35となりました。今定例会に提出されている「いわて子どもプラン」では、令和4年に出生率1.58の目標を掲げていますが、既に減、踏み込んだ取組をしないと出生率は上がりません。
 公益財団法人1 more Baby(ワン・モア・ベイビー)が今年5月に公表した既婚男女約3千人の意識調査では、7割が「子どもを産みやすい国に近づいていない」と回答しています。若い世代が将来に展望を描ける岩手県にするためには、①家庭・子育てと仕事とを「両立」しやすい環境であること、②「経済」的な安定が得られる就業・生活環境であること、③「まち」が多くの人にとって住み続けたい、戻ってきたいと思える魅力や文化・環境、支え合いのコミュニティづくりによる「安心感」を持っていることが重要ではないかと考えています。
 知事は、岩手県が子どもを産み育てやすい県に近づいていると思いますか。またその理由はなぜですか。今後の具体策についても伺います。

答弁
 子どもを生み育てやすい環境づくりについてでありますが、県では、市町村など様々な主体と連携し、結婚、出産、子育て支援などの取組を進めてきたところであり、令和2年県民意識調査の「安心な子育て環境整備」の満足度が、平成30年、31年調査と比較して上昇しているところであります。
 一方、本県の合計特殊出生率は全国と同様に低下傾向にあり、県では、少子化対策・子育て支援は、将来に関する問題であると同時に、今、目の前にある重要な課題であるという認識のもと、これらの課題に対応するため、本定例会に「いわて子どもプラン(2020~2024)」の策定について議案を提出しているところであります。
 このプランに基づき、子どもの医療費助成の現物給付の拡大による経済的支援、仕事と子育てを両立するための働き方改革や女性活躍支援を進めるとともに、結婚、出産、子育て等に関する情報を切れ目なく提供し、社会全体で子どもを生み育てやすい環境づくりを推進していくこととしております。
 これらの取組に当たっては、県、市町村、保護者、子ども・子育て支援機関等、事業主及び県民の適切な役割分担の下、相互に連携し、「社会全体で県民の結婚、妊娠、出産及び子育てを支え、誰もが子どもを健やかに育みやすいと実感できるいわて」の実現を目指してまいります。

(2)周産期医療体制の充実について
 令和元年12月、「成育基本法」(成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律)が施行されました。「社会的経済的状況にかかわらず安心して次代の社会を担う子どもを生み、育てることができる環境が整備されるように推進」することを基本理念としております。この基本理念に則って、以下質問します。まずは、周産期医療体制の充実について伺います。
 岩手県は9つの医療圏に対し、患者搬送や受診動向、医療資源などの観点から平成20年4月に4つの周産期医療圏を設定し、医療提供体制を整備しています。国の「医療計画の見直し等に関する検討会」では、産科関係学会から医療圏の設定の見直しや周産期母子医療センターの集約化・重点化に関する提言も出ています。今年に入り、県周産期医療協議会の会長でもある岩手医大の馬場長先生とも懇談しました。
 県内の分娩を取り扱う医療機関は年々減少し、今年5月でまた一つの診療所が減り、周産期医療圏を設定した平成20年の45施設から現在は25施設にまで減少しました(平成21年3月:病院13、診療所32/令和2年5月:病院11、診療所14)。分娩を取り扱う医療機関が周産期母子医療センターのみである周産期医療圏も存在します。一方で、医学的ハイリスクのみならず、メンタルヘルスなど社会的ハイリスク妊産婦も増加しています。さらには、令和6年度の医師の時間外労働の上限規制(働き方改革)の施行にも対応していかねばいけません。
 こうした状況の中、周産期医療圏の設定、集約化・重点化についての今後の考え方についての認識を伺います。

答弁
 周産期医療圏の設定については、県では、これまでも医療計画策定の中で、周産期医療協議会等において協議を進めてきたところであります。
 現行の岩手県保健医療計画(2018~2023)策定時においても「周産期医療実態調査」を実施し、各周産期医療圏の居住者が圏域内で出産した割合が8割程度と概ね圏域内で完結している状況等を踏まえて、現在の4つの周産期医療圏を継続することとしたものであります。
 県としては、次期医療計画策定に向け、改めてこの実態調査を実施するとともに、精神疾患を合併した妊産婦等、社会的ハイリスク妊産婦への医療機関の対応について把握し、さらには、働き方改革への対応など医師を始めとした医療従事者の勤務環境の改善にも十分配慮しながら、人口動態や医療資源の動向などを踏まえ、中長期的観点から質の高い安全な周産期医療を適切に提供していくための周産期医療圏の在り方など、医療提供体制の検討を進めていく考えであります。

(3)産科医の確保対策について
 本年3月に岩手県医師確保計画が策定されました。県では、即戦力医師の招へいや奨学金医師養成などにより産科医確保に取り組まれ、平成30年度からは産科を選択した奨学金養成医師の配置特例を設け、今年度からは地域枠養成医師を対象に岩手医大の総合周産期母子医療センターでの専門研修期間の一部を義務履行として認めることとし、また、医療局奨学金にも産科の特別枠を設定するなど、総合的な施策の展開に大変努力されていることに敬意を表します。

ア、産科医確保のための施策について
 一方で、岩手県周産期医療協議会などでは、「産科医の確保は、小児科、麻酔科もセットでなくてはならない」とのご指摘もあります。今回の医師確保計画の中では、令和5年度までに23名の産科医師確保の目標を掲げていますが、前述の視点は考慮されているのでしょうか。また、目標達成のために新たに追加された施策について併せて伺います。

答弁
 産科医確保のための施策についてでありますが、周産期医療提供に当たっての小児科医及び麻酔科医の必要性については、医師確保計画の上位計画である保健医療計画に盛り込んでおり、小児科医については、医師確保計画においても令和5年度までに22人を確保する目標を掲げ、取り組んでいるところ。
 また、奨学金養成医師について、専門的スキルの維持・向上のための研修期間を設けるなど、義務履行とキャリア形成の両立を支援することにより、麻酔科を含む全ての診療科の医師確保・定着に努めている。
 産科医、小児科医確保のための新たな取組としては、議員から御紹介のあった義務履行の特例措置や医師奨学資金の新たな特別枠の設定を行ったほか、岩手医大への寄附講座の設置により障がい児者医療に従事する小児科医等の育成及び確保を進めることとしており、これらの取組により目標の達成を目指していく。

イ、助産師の育成・確保について
 今回の計画期間内に医師数の大幅な増加を図ることが困難であることから、現在の診療体制を維持するために必要な医師数を確保することを方針としていますが、医師確保が困難であれば、院内助産や助産師外来の設置目標など、助産師を活用した今後の方針についても具体化すべきではないでしょうか。アドバンス助産師の育成状況、潜在助産師の確保や現場への復職状況についてと併せて県の見解を伺います。

答弁
 助産師の育成・確保についてでありますが、助産師に関しては、令和元年度の県ナースセンターにおける求職登録者数は10名、センター事業等による復職者数は平成30年度及び令和元年度とも1名ずつであるが、助産師就業者数は増加傾向にある。また、県内のアドバンス助産師数は制度開始時から5年間で153名と順調に増えているところ。
 助産師外来や院内助産の取組は、医師の負担軽減や妊産婦の多様なニーズに対応する上で有効であり、その導入促進や助産師外来等を担う人材の育成・確保が重要と認識している。県では、この人材確保を進めるとともに、周産期医療協議会等において意見を伺いながら、助産師の活用の具体的な方策等について検討を進めていく考え。

再質問
 潜在助産師の掘り起こしや研修が行われてきたが、これを活かすことが大事。一方で、アドバンス助産師が5年で153名いるということだが、その方々が実際に現場に復帰している人数について、改めて伺う。

答弁
 県で行っている事業を活用して現場復帰された方が1名ということだが、助産師については、病院で勤務する以外にも、産後ケアや母子保健など周産期に関連する事業に必要な人材であり、こうした市町村における様々な母子保健事業に従事、又は流動的に就業いただいていると認識しており、こうした助産師の状況についても把握、精査して充実に努めていく。

再質問
 市町村の産後ケアに従事している助産師を今後把握してきたいという答弁だと思うが、現場にしっかり復帰できているのかを県が把握することが大事。
 せっかく掘り起こして研修はやったが、現場で生かされる研修内容なのか、現場でもっとこういうことが必要なので、産後ケアのこういう部分を研修として次やっていくということがないと、次のステップにつながらないのではないか。改めて伺う。

答弁
 2024年からの次期保健医療計画に係る国の基本的な検討の方向として、潜在助産師やアドバンス助産師の活用を進めていく、各地で有効な事業が進められており、こうした事業について精査・検討したうえで、全国展開を図っていくという方針が示されている。
 こうした各地で行われている事業や議員から御指摘のあった助産師が現場でどのような状況にあるかを併せて精査し、今後の周産期医療体制の充実に向けて検討を進めていく考え。

(4)医学部を目指す高校生へのキャリア教育支援について
 茨城県では、平成29年度から医師不足対策の一環として私立高に対して、過去3年間の大学医学部医学科への進学実績に応じて補助金を出す取組をしています。一方、県では、医学部を目指す中高生へのキャリア教育支援を行っており、大変良い取組と考えますが、まずは公立だけでなく私立高校の医学部進学者数の把握をし、実績ある(公立・私立)高校への補助も検討してみては如何でしょうか。

答弁
 医学部を目指す高校生へのキャリア教育支援についてでありますが、令和2年度における県内の高校からの医学部進学者数は65名で、高校別に見ると、県立高校からは64名、私立高校からは1名となっている。
 地域別に見ると、盛岡圏域が52名、岩手中部圏域と両磐圏域がそれぞれ5名、その他の圏域が1名から2名となっており、地域によって進学者数に差が生じている。
 このため、令和2年度から県教育委員会と連携して、高校や地域に関係なく医学部進学を目指せるよう、医学部進学を希望する生徒の学力向上や意識醸成のための体系的・集中的なプログラムである「岩手メディカルプログラム」を開始したところ。
 こうした取組や議員から御紹介のあった茨城県など他県の状況等を踏まえ、効果的な取組のあり方について研究していく。

(5)妊産婦へのアクセス支援について
 今年度新たに事業化されたハイリスク妊産婦のアクセス支援については、心から敬意を表します。今回対象となった妊産婦については、周産期母子医療センターだけでなく民間診療所を希望する方への拡充、母子保健法では妊産婦の定義は産後1年までとしていることから、妊産婦のアクセス支援であるならば、産婦健診も対象とすること、市町村の妊産婦に対するアクセス支援の現状には格差もあり、周産期医療圏外へ通院するすべての妊産婦に対しても拡充していくことなども今後検討して頂きたいと思います。また、障がいをもって生まれた場合など、NICUへの入院で産婦の通院は継続されますが、その場合についても対象とすべきと考えます。これらについて県の見解を伺います。

答弁
 妊産婦へのアクセス支援についてでありますが、分娩医療機関の機能分担により、ハイリスク妊産婦は、基本的には周産期母子医療センターで対応することとなりますが、正常分娩の妊婦と比較して、通院に長距離移動を余儀なくされることなどから、身体的・経済的な負担の軽減を図ることを目的として、県では、今年度新たにハイリスク妊産婦アクセス支援事業を実施することとしたところであります。
 議員御指摘の事業対象の拡大・拡充については、ハイリスク妊産婦アクセス支援事業の今年度の実施状況を踏まえ、産婦健診や新生児がNICUに入院した場合の産婦の通院等については、まずは、市町村等を通じてニーズや課題等の把握に努めてまいります。

(6)産後ケアの取組について
 次に、産後ケアの取組について伺います。
 産科医等の不足、分娩施設が減少する中で、先に挙げたように周産期医療体制の整備を図ると同時に、地域で妊産婦を支える取組が一層重要であり、その一つの産後ケアの充実についてはこれまでも提言させていただいています。今回の医師確保計画の産科医指数の大幅な増加を図ることが困難であると県の認識があれば、なおさらです。周産期医療体制と産後ケアの提供体制はセットで考える必要があると思っています。切れ目のない支援を目指す子育て世代包括支援センターの設置や産後ケアの内容には地域間格差があるのも現状です。自治体の行う産後ケアに対し、広域で利用できるよう県が支援する仕組みを早急に整えるべきと考えています。

ア、妊産婦のオンライン相談について
 現在、コロナ対策として、国において、市町村が実施するオンラインによる保健指導等の実施や里帰り出産が困難な妊産婦に対する育児等支援サービスの提供、集団で実施している乳幼児健康診査の個別健診への切り替えに対する支援を実施しています。花巻市では、これを活用して、産後ケア事業を委託する団体が行うオンライン相談に対し補助する事としたそうです。オンラインであれば花巻市民に限らずどこからでも相談が可能となります。コロナを契機に捉え、例えば、この団体へ県が支援をして、県内全ての産婦のオンライン相談を可能にする広域の取組に着手してみては如何でしょうか。

答弁
 まず、妊産婦のオンライン相談についてでありますが、国では、新型コロナウイルス感染症の流行下において、事業の実施主体である市町村が、オンラインによる両親学級等の保健指導を実施するための設備等を補助するとともに、原則、訪問や集団により実施されている産後ケア事業等を電話やオンラインで実施することについても、時限的にではございますが事業の一環として位置づけることを可能としたところでございます。
 このような、外出することが難しい状況においては、オンラインによる取組が有効と考えられることから、県では、市町村に対しまして、これらの事業に関する情報提供を行うなど、取組の促進を支援しているところでございます。
 オンライン相談の広域化については、利用ニーズの把握や、市町村の実施体制、相談後のフォローアップのあり方など、実施に当たっての課題について、今後、市町村と意見交換をしていきたいというふうに考えています。

イ、産後ケアについて
 国の新たな少子化大綱の中で、昨年成立した改正母子保健法を踏まえ、出産後の母子に対して、心身のケア等を行う産後ケア事業について、令和6年度末までの全国展開を目指すとされましたが、今後の県の産後ケアの取組についても併せて、県の見解を伺います。

答弁
 産後ケアについてでありますが、産後ケア事業の実施については、母子保健法の一部改正により、市町村の努力義務とされており、妊産婦等が身近な地域できめ細やかなケアを受けられる環境を整備することが重要でありますことから、県では、いわて県民計画(2019~2028)政策推進プランにおきまして、2022年度までに全ての市町村で実施されることを目指して取り組んでおります。
 昨年度末現在、18市町で産後ケアが実施されていまして、本年4月から3市町で新たに実施されるなど、実施市町村は増加しているところであります。
 県では、引き続き保健所単位で開催している連絡調整会議の場を活用し、県内市町村等の取組事例の紹介や、事業を行うための課題の整理など、単独では事業の実施が困難としている市町村における事業展開の手法も含めて、市町村と意見交換を行いながら、地域の実情に応じて取り組むことができるよう助言するなど、事業の実施主体である市町村を支援していく考えでございます。

(7)妊産婦への医療費助成について
 次に、妊産婦への医療費助成について伺います。
岩手県では他県に先駆けて昭和48年から妊産婦の医療費助成を開始し、現行の給付制度になって4年が経とうとしています。その間、先に述べたとおり、昨年12月に成育基本法が施行されました。現在、対象は妊娠5か月から産後1か月までとなっていますが、母子保健法に規定する妊産婦の定義を踏まえ、助成期間を母子健康手帳交付から産後1年までとすべきではないでしょうか。今年度から「ひとにやさしいまちづくり推進指針」が新しくなりましたが、「ひとにやさしい駐車場」の妊産婦の対象期間も見直して頂きました。先の2月定例会では、岩手県保険医協会からも、助成期間に加え、所得制限の撤廃についての請願があり、採択されました。母子健康手帳交付から産後1年までとした場合、どの程度の財源増が必要なのでしょうか。今後の県の考えについて伺います。

答弁
 妊産婦の医療費助成についてでございますが、この事業は、委員から御紹介いただいたとおり、全国で本県を含む4県のみで実施しているところでありまして、一部の県では妊産婦特有の疾病に限定して助成するところもある中、本県では疾病の制限を設けず、妊娠中期から産後1か月までに受けた医療を幅広く助成対象としており、安全、安心な出産環境の整備に寄与しているところであります。
 助成期間を母子健康手帳交付月から産後1年までに拡大した場合の県の財政負担額を試算いたしますと、現在の1億1千万円から、2億5千万円増加すると見込まれるほか、市町村もほぼ同額の負担増が生じますことから、助成期間の拡大に当たりましては、妊産婦の医療ニーズや市町村の意向も十分踏まえつつ、慎重に検討していく必要があると考えております。

(8)多様な保育サービスの提供について

 次に、多様な保育サービスの充実について伺います。
 本県では、休日保育や一時預かり、ファミリーサポート事業などの利用には自治体や地域間で格差があります。内閣府では平成28年度から「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」を行っていますが、岩手県での利用はあまり耳にしません。今回のコロナ禍では、在宅勤務となったことでベビーシッターの需要が高まったと聞いています。母親の1日の育児時間が5時間以上増えたとの調査結果もありますが、平時から、就業形態や就業の有無にかかわらず誰でも子どもを預けられるようサポートしてもらえる時代に即した多様な保育サービスの充実は重要と考えています。本県における多様な保育サービスの提供が十分とお考えでしょうか伺います。

答弁
 多様な保育サービスの充実についてでございます。
地域の実情に応じた子育て支援施策として実施されている地域子ども・子育て支援事業については、令和元年度の実績を平成30年度と比較すると、延長保育、一時預かり、病児保育等については、実施か所数が増加傾向にございます。
 また、従業員の働き方に応じ、多様で柔軟な保育サービスを提供することができる企業主導型保育事業所なども着実に増加しているところでございます。
 県においても地域における多様な保育サービスを更に充実していくことが必要であると認識しており、そのためには、市町村と連携して地域の実情に応じた取組を進めていくことが重要と考えています。
 県では、市町村が地域の保育ニーズに応じた必要なサービスを提供できるよう、子ども・子育て支援事業支援計画に基づき、市町村との意見交換を丁寧に行いながら、施設整備及び運営に対する財政支援や保育人材の確保などに取り組み、市町村を支援して参ります。

(9)多胎児家庭への支援について
 次に、多胎児家庭への支援について伺います。
 これは昨年6月の一般質問でも取り上げました。本県の多胎児の分娩件数は、平成29年は78件、出生数における多胎児の割合は約1.8%で、この30年間で約0.5ポイントの増でした(平成30年度は76件)。昨年は、研究するというあまり前向きなご答弁を頂けませんでしたが、厚労省は今年度から多胎児がいる家庭に対する支援を開始することとしています。昨年のご答弁は、多胎児家庭の数の割合などから判断されたのかもしれませんが、数の問題ではなく、それが1組であったとしても、その大変さを理解することが大事ではないでしょうか。国の方針決定から、県の見解はどうなりましたでしょうか。今後の考えについて伺います。

答弁
 多胎児家庭への支援についてでありますが、県では、安心して子どもを生み育てられる環境を整備していく上で、子育て負担の大きい多胎児家庭への支援の充実を図ることが重要と考えております。
 今般、国において、孤立しやすく、産前・産後で育児等の負担が大きい多胎妊産婦等を支援するため、新たに、産前・産後サポート事業に支援のためのメニューを創設し、市町村が行う多胎妊産婦等の負担感や孤立感の軽減を図るための取組に対し、財政支援を行うこととしたところであります。
 県としては、市町村において積極的な事業展開が図られるよう、国庫補助事業を周知するとともに、先行事例を紹介するなど、市町村の取組を支援していく考えであります。

(10)妊孕性(にんようせい)温存治療への支援について
 次に、がん患者に対する妊孕性温存治療(注1)への支援について伺います。
 国立がん研究センターと国立成育医療研究センターは0~14歳の小児と15~39歳の思春期・若年成人を指す「AYA(あや)世代」のがん患者に関する報告書を昨年公表しました。報告書によると、AYA世代の患者は75.9%を女性が占めていることが分かりました。年代別に見ると、19歳以下は女性は5割以下ですが、20~24歳で6割を超え、25歳以降は8割前後となります。2人に1人はがんになる時代。がん治療を若い世代が受けると、女性は卵巣・子宮、男性は精巣などの生殖機能に悪影響が出る可能性があります。治療後に妊娠したいという希望をかなえる温存治療は、保険適用外のため女性20万~50万円、男性が4万~6万円かかり、また、保存を続けるために毎年数万円ずつかかります。本県では、平成30年3月に第3次岩手県がん対策推進計画を策定し、その中でもAYA世代のがん対策について謳っていますが、岩手県のAYA世代の患者数の推移の状況と、将来の妊娠に備え、治療前に卵子や卵巣組織の一部、精子を採り、凍結しておく「妊孕性温存治療」への助成についての本県の考えを伺います。

答弁
 妊孕性温存治療への支援についてでありますが、県内の15歳から39歳までのAYA世代のがん罹患数は、「岩手県がん登録事業報告書」によると、平成26年診断例では172人、27年は158人、28年は212人となっている。
 妊孕性温存は、若年のがん患者の治療中や治療後における、生活の質の維持・向上を図る上で重要と考えているところであるが、一方で、20歳以上40歳未満のがん患者に対する医療費助成等の支援制度がなく、全国的に患者の負担が大きいことが課題となっている。
 このことから、妊孕性温存治療への支援については、昨年度までに12府県が実施し、今年度は10県が開始すると承知しており、県では今後、これら他府県の取組事例について情報収集するとともに、医療関係者等との意見交換などにより、県内の状況について把握を進め、今後の支援のあり方について検討していく考えである。

注1)妊孕性温存治療…がんなどの疾病の治療のために行う放射線療法や化学療法、ホルモン療法による副作用で生殖能力が失われてしまわないようにあらかじめ保護したり、または生殖能力を失うことが避けられない場合には将来人工授精などによって子孫を残せるように治療の開始前に生殖細胞(精子や卵子)を採取・保存したり、または人工授精によって受精させた受精卵を保存しておくこと。 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

3.移住促進と雇用対策について

(1)地方への移住の促進について
 はじめに、新型コロナウイルス感染症拡大を受けた今後の働き方と地方への移住の促進について伺います。
 新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、都市部を離れて地方で暮らすことへの関心が高まりつつあります。内閣府が行った新型コロナウイルスの感染症拡大を受けた働き方や意識の変化に関する調査では、就業者の34.6%が不定期を含めたテレワークを経験し、地方移住については首都圏の20代の関心が特に目立ち、3割近くが高まっていると回答しています。東京一極集中の是正、企業のリスク分散など、地方への移住を促進するチャンスであり、県でも岩手県新型コロナウイルス感染症対策の基本対処方針において、今後の働き方として、テレワークなどの取組の推進を言及しています。
 県は、首都圏の企業や人々を受け入れるための様々な環境を整備する発想が必要と考えますが、本県への移住の促進について、今後の課題や取組の方向性について伺います。

答弁
 本県への移住の促進についてでありますが、議員御指摘の内閣府調査によると、テレワークの経験者のうち、東京圏では約4割の方が今後の利用を希望しており、特に東京23区にあっては5割を超える方が希望している状況と認識しております。
 今後、テレワークなどの新しい働き方を推進する企業や、こうした働き方の下で地方への移住を希望する方々に対応していくためには、情報通信基盤の整備を加速することがまず必要だと考えております。県としては、市町村や通信事業者等に、光ファイバを始めとする情報通信基盤に係る国の支援制度の活用を働きかけながら、整備を促進してまいります。
 また、移住を希望する方々には、仕事と暮らしの拠点に関する情報提供の更なる充実が必要であると考えておりまして、新しい働き方を実践できるコワーキングスペースやシェアオフィス、住宅などの情報を市町村との連携を更に強化しながら発信して、岩手への移住を促進してまいります。

(2)若年女性の就業促進について
 次に、若年女性の就業促進について伺います。
 2019年の総務省の統計「住民基本台帳人口移動報告」をもとにした女性の転出実態についての調査結果が先ごろ報告され、他地域へ移動する女性全体のうち、15~29歳の若年女性が占める割合が岩手県はワースト10位に入っています。若年女性の転出を食い止めることが人口減少対策の重要部分です。
 今年4月、ヘルスケア産業の拠点となる貸研究施設「ヘルステックイノベーションハブ」が開所になりました。女性社員の割合は2割程度と聞いています。県はヘルスケア産業を自動車、半導体に次ぐ本県ものづくり産業の「第3の柱」と位置付けていますが、県が力をいれる産業に女性労働者の就業の視点をしっかり入れて頂きたいと思っています。若年女性の県内企業への就業促進について、県の支援策をお示しください。

答弁
 若年女性の就業促進への支援についてでありますけれども、県では、女性が働きやすい環境整備につながる各種認定等の取組を進めておりまして、「いわて女性活躍企業等」の認定企業数は、令和2年6月25日現在で153社に、「いわて子育てにやさしい企業等」の認証企業数は、114社となっておりまして、女性が長く安心して働き続けることができる企業が増えていると認識しております。
 また、県単独の補助によりまして企業の働き方改革の取組を支援いたしますとともに、県内企業の優良な取組事例を「いわて働き方改革アワード」において、広く情報発信し、普及啓発を図っているところであります。
 若年女性が、こうした状況をよく理解した上で就職先を決めていただけるよう、県内で働く女性と学生・生徒との交流の機会の創出や、ものづくり産業等で活躍する女性を動画で紹介する、そういった取組を通じまして、県内の多様な分野で活躍している女性の情報や、働きやすい環境づくりに取り組んでいる企業の情報をしっかりと発信し、県内企業への就業を支援しているところでございます。

4.男女共同参画社会の実現について

(1)男女共同参画の取組について
 男女共同参画の取組について伺います。
 本県では、平成 12 年3月に「いわて男女共同参画プラン」を策定し、平成 14 年 10 月には「岩手県男女共同参画推進条例」を制定しました。男女共同参画社会の実現こそ、誰もが生きやすい社会の実現であるため、岩手が目指す一人ひとりの幸福につながるのではないでしょうか。

ア、男女共同参画の取組について
これまでの取組で本県の「生きやすい社会」の実現はどう達成されているのか、知事のご所見を伺います。

答弁
 男女共同参画の取組についてでありますが、県では、「いわて男女共同参画プラン」の基本目標に、男女がお互いに尊重し合い、共に参画する社会の実現を掲げ、男女共同参画センターを中心として意識啓発や学習機会の提供を行ってきたほか、官民一体となって設置した「いわて女性の活躍促進連携会議」の活動を通じて、女性が働きやすい環境整備などの取組を進めてきたところ。
 その結果、女性の経営者や専門的・技術的職業従事者が増加し、女性の年齢別の労働力人口の割合をグラフで表した、いわゆるM字カーブの底が浅くなってきており、平成27年の国勢調査では、ほぼすべての年齢階級で全国平均を上回る状況となっている。
 また、平成27年度から昨年度までの5年間では、県の採用職員に占める女性の割合は約1割増加し40.8%になったほか、いわて子育てにやさしい企業等認証制度の認証企業数は32社から148社まで増加するなど、女性の就業が進み、仕事と子育てを両立しやすい環境が整ってきているものと認識している。
 引き続き、家庭・地域・職場など様々な場において、男女が、お互いにその人権を尊重し責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を発揮できる男女共同参画社会の実現に向けた環境づくりに取り組んでいく。

イ、「いわて男女共同参画プラン」の達成状況等について
 また、現在の「いわて男女共同参画プラン」は今年度が最終年度となっていますが、プランの達成状況と今後の方針について伺います。

答弁
 いわて男女共同参画プランの達成状況等についてでありますが、プランでは目標値を定め施策として取り組むものとして、主要指標を24項目設定しており、直近の取りまとめでは、そのうち18指標が年度目標値を8割以上達成している状況にある。
 具体的には、女性活躍のための経営者や従業員向けの研修参加者数、共働き世帯における男性の家事時間の割合、地域の活動を支える男女共同参画サポーターのうち男性の認定者数が着実に増加しており、職場や家庭、地域における人材育成や意識啓発等が進んできている。
 男女共同参画の更なる推進に向けては、女性活躍の促進、ワーク・ライフ・バランスの推進、女性に対する暴力の根絶などに引き続き取り組んでいくことが重要であると認識していることから、その具体的な推進方策について、次期いわて男女共同参画プランに位置づけ取り組んでいきたいと考えている。

(2)LGBTの理解促進に向けた取組について
 LGBTの理解促進の取組等について伺います。
 大阪府は今年1月、LGBTなど性的少数者のカップルを公的なパートナーとして認証する「パートナーシップ宣誓制度」を始めると発表しました。都道府県では茨城県に次いで2例目となります。
 NPO法人虹色ダイバーシティによると、パートナーシップ証明が受けられる自治体は日本全国で令和2年4月現在で47自治体に上りますが、東北では一つもありません。対象を性的少数者に限定せず、男女の事実婚カップルを加えている自治体もあります。茨城県では、県営住宅に入居する際の「同居人が親族」という要件にパートナーシップ認定を含めています。また、性的少数者に配慮するための、何らかの取組を実施している企業は全体の約1割にとどまることも、厚労省の初の実態調査で分かりました。まだまだ社会全体の取組が進んでいないというのが現状ではないでしょうか。
 今月6月はいわて男女共同参画推進月間でもあり、先日のフェスティバルのテーマは「性の多様性・LGBTと男女共同参画」でした。岩手県では、男女共同参画センターが積極的に様々な事業展開をし、LGBTへの理解促進に努めています。今後はさらに企業はもとより教育現場への理解促進の取組が重要と考えますが、本県のパートナーシップ制度導入に関する見解と併せて伺います。

答弁
 LGBTの理解促進に向けた取組についてでありますが、県では、これまで男女共同参画センターにLGBTに関する相談窓口を設置し対応するとともに、啓発パネルの貸出等により普及啓発を行ってきた。
 また、平成29年度からは、学校や企業などを対象とした出前講座を実施しており、中学校や高等学校の生徒や教職員に対する啓発を行ってきたほか、令和元年度には、生徒や保護者向けの新たなリーフレットを作成し活用しており、こうした機会を更に拡充し、教育現場への理解促進に取り組んでいくこととしているところ。
 パートナーシップ制度については、多様な性に配慮する取組のひとつであると認識しているが、まずはこうした相談対応や普及啓発などの取組を積み重ねながら、性別に関わりなく多様な生き方が認められる社会の実現に向けた意識の醸成を進めて行く。

5.農林水産業の振興について

(1)家族農業への支援について
 家族農業への支援について伺います。
 今回のコロナ禍は、国民が農業や食(食料)について考える契機になり、食生活への変化が表れていると私は感じています。家庭の食が大きく変化する中で、食料自給率や輸出依存のリスクへの関心も高まる中、日本の農業、岩手の農業にいかに関心を持ってもらうか、生産者の顔の見える取組、生産者と消費者をつなぐ場づくりなどの工夫が重要だと改めて感じています。そして、そういった取組に力を入れているのが、家族農業の皆さんでもあります。
 国連は、世界の食料安全保障確保と貧困撲滅に大きな役割を果たしている家族農業について、2019年から10年を国連「家族農業の10年」と定めました。世界の食料生産額の8割以上を占める「家族農業」が果たす役割の重要性を強調しています。家族農業は、日本の農業の中心的形態ですが、高齢化や後継者不足により大規模化が加速しているのも現状です。大規模化を推進する一方で、ICTやAIなどを駆使した「次世代農業」をかけ合わせた新たな「家族農業」の実現がSDGsの取組にも寄与するものと私は考えています。家族農業について、県はどのように考え、支援していくのか伺います。

答弁
 家族農業への支援についてでありますが、
 本県の農業経営は、経営体の約97%が家族経営体であり、農業生産に重要な役割を担うとともに、国土の保全や地域文化の伝承など、農業・農村の多面的機能の維持に大きく寄与している。
 本県の農業が、今後とも、地域経済・社会を支える持続的な産業として発展していくためには、家族経営の安定化とその果たす役割が重要であることから県では、「いわて県民計画(2019~2028)」に基づき、多くの小規模・家族経営を中心とする集落営農組織等の経営規模の拡大やスマート農業技術の導入による生産活動の効率化などを進めるとともに、農村の活性化に向けた、小規模・家族経営などの地域を支える多様な生産者による農地や景観の保全、地域文化の伝承など、地域の農業・農村を維持する取組を推進している。
 また、家族経営による食料生産や多面的機能の維持・発揮に寄与する取組は、持続可能な地域社会の実現を目指すSDGsにつながるものと考えており、県としては、今後とも、様々な役割を担う家族農業を支援していく。

(2)農林水産分野の食品廃棄物削減の取組について
 次に、農林水産分野の「食品廃棄物削減」の取組について伺います。先ほど申し上げたSDGsにおいては、食品廃棄物の削減に関する目標も掲げられています。
 今回のコロナ禍で、収入が減ったり、失業したりする人が増えている影響から、現在、全国のフードバンクに食料を求める問い合わせが相次いでいます。「フードバンク岩手」では、市民・企業から頂いた食料品を、岩手県内の生活に困っている方々へ支援機関を通じて無償の食料支援を行い、早期の生活改善につなげる活動をしています。また、子ども食堂の食料支援にも申込が殺到しています。こうしたフードバンク等に、出荷規格から外れ、まだ食べられるのに捨てられてしまう農林水産物を提供する取組が有効と考えられます。生産者や事業者いわゆる農林漁業者や食品関連事業者が規格外の農産物や余剰在庫の活用に向けて、JA等の関係団体や流通関係者との連携を構築し、農林水産分野における食品廃棄物削減に取り組むことは、SDGsの「つくる責任つかう責任」の目標達成にもつながります。
 そこで、本県の農林水産分野における食品廃棄物削減に向けた取組状況と、こうした取組を進めていくための課題について伺います。

答弁
 農林水産分野における食品廃棄物削減の取組についてでありますが、
 県では、規格外の三陸産牡蠣等をフレーバーに使用した「米粉スナック」や、収穫段階で傷ついたトマト等を活用した「野菜ドレッシング」など、これまでは廃棄せざるを得なかった生産物を活用した商品の開発を支援している。
 また、野菜などの腐敗を防ぐ効果のある「鮮度保持フィルム」の導入を促進するなど、流通段階での品質低下を防止し、販売できずに廃棄する野菜を発生させない取組を進めている。
 フードバンク等への食材提供については、JAいわてグループが、規格外の農産物や産直施設で売れ残った食材等を集め、県内のフードバンクや子ども食堂に提供する活動を行っていると承知している。
 農林水産分野における食品廃棄物削減には、関係者の機運醸成と連携が課題であると認識しており、県としても引き続き、JAいわてグループをはじめとする関係団体と意見交換等を行いながら、意識啓発や連携促進に取り組んでいく。

(3)いわての森林づくり県民税の活用について
 次に、いわての森林づくり県民税の活用について伺います。
 平成18年度に創設された「いわての森林づくり県民税」は今年度が第3期の最終年度です。事業評価委員会からの本年3月の「県民税を継続し、使途拡大など施策の充実を図ることが必要」との提言から、県はこのほど素案をまとめられました。
 徹底した再造林対策と同時に、私が課題と捉えている一つは、県民税の認知度が40%台に留まっているということです。県民の森林との共生に関する取組の工夫が必要と感じています。県の管理する森林公園は5つありますが、その全てに木製アスレチックは設置されていません。素案には、木育の推進や森林公園等の拠点機能強化の拡充が盛り込まれましたが、例えば、子育て世代が森林公園をさらに利用したくなるような環境にするなど、県民が森林に親しむ機会の創出に大変期待しているところです。
 また、このコロナ禍で、自然環境での遊びも再認識されています。本県は、「森と自然の育ちと学び自治体ネットワーク」に加盟しています。これは、森と自然を活用した保育や幼児教育について、理念や実践経験を全国の自治体間で共有しようというもので、保健福祉部が所管しています。これまで鳥取県・長野県・広島県で「森と自然を活用した保育・幼児教育」の県レベルの認定制度が創設されております。また、滋賀県では、森林環境学習の裾野の拡大という観点から、子育て・教育部署と連携して、初めて農林水産部署が主体となった認定制度が創設されました。私は森林との共生の取組として大事なのは、幼少期から森や自然に親しめる環境を作ることと考えます。そうすることで親世代が再び学ぶ機会ともなるからです。本県での全国植樹祭は令和5年開催と1年延期されることとなりましたが、全国植樹祭を契機として県民の森林に対する関心を高めることにもつながります。
 農林水産部としても、いわての森林づくり県民税などを活用して、「森と自然を活用した保育・幼児教育」を進めるため、「森と自然の育ちと学び自治体ネットワーク」を所管する関係部局と連携して取り組んで頂きたいと考えていますが、県の見解を伺います。

答弁
 いわての森林づくり県民税の活用についてでありますが、県では、いわての森林づくり県民税を活用し、公益上重要で緊急に整備が必要な森林を針広混交林へ誘導する強度間伐をはじめ、地 域住民等が行う森林づくり活動や、森林環境学習への支援等に取り組んできたところ。
 今般公表した、「令和3年度以降の『いわての森林づくり県民税』の素案」は、今後、県民の皆様をはじめ県議会等の御意見を伺いながら成案としていくものであるが、この中では、幼児や児童・生徒等を対象とした自然観察会など森林環境学習への支援のほか、新たに、森林環境学習のフィールドとなる森林公園の機能強化や、森林を学ぶ活動等を支援する人材育成を盛り込むなど、取組を拡充したいと考えている。
 こうした取組により、幼児も含め幅広い年齢層の県民が、森林との触れ合いや森林の役割等を学ぶ機会が得られ、また、子どもたちの豊かな体験活動の充実が図られるよう、活動フィールドの紹介や、県民税による助成制度の情報の提供などを進めていきたいと考えている。

6.教育政策について

(1)GIGAスクール構想について
 教育政策について伺います。初めに、GIGAスクール構想について伺います。
 国が進めるGIGAスクール構想は、今回のコロナを好機と捉え、本県においてもより早期に実現することが望まれます。1人1台端末を整備すると同時に、オンラインでの双方向の学習環境の整備をすることにより、不登校など児童生徒の学びの選択肢が広がります。今後は、オンライン授業の内容や教材、教職員への指導なども課題だと思いますが、経済産業省のEdTech導入実証事業や学びと社会の連携促進事業などを活用して、充実したオンライン学習環境の早期実現を目指して頂きたいと思っています。
 本県の小中高校におけるPC1人1台端末の実現は、いつ頃達成する見込みでしょうか。また、全ての児童生徒のオンライン学習が可能となるには、今後どのような支援策が必要となってくるのか伺います。

答弁
 県教育委員会では、現在、県立附属中学校及び特別支援学校小学部、中学部の全児童生徒を対象とした1人1台端末の整備を進めているところであり、今年度中の整備を予定しているところ。
 また、県内各市町村においても、今年度にはほとんどの小中学校で整備される見込みであるが、一部の市町村では来年度に繰り越される場合もあると伺っている。
 なお、オンライン学習等を推進していくためには、通信環境が十分に整っていない家庭への支援等が必要であり、配信する授業内容やオンライン教材等を、どのように工夫していくかが重要であり、県教育委員会では、家庭への貸出用モバイルルータの整備や、オンライン学習支援サービスに取り組むための経費についても、令和2年度補正予算により措置したところであり、引き続きオンライン学習等も含め、ICTを活用した授業改善や児童生徒の確かな学力の育成を推進して参ります。

7.文化芸術を生かした魅力あるまちづくりについて

 若い世代が将来に展望を描ける岩手県とするためには、前段でも述べましたが、そのひとつに、「まち」が多くの人にとって住み続けたい、戻ってきたいと思える魅力や文化・環境であることだと考えています。
 世界で一番面白い街を作ろう!とクリエイティブな手法でまちのファンを増やす関係人口づくりをしている一般社団法人ISHINOMAKI2.0代表理事の松村豪太さんが、先日の人口減少対策調査特別員会の講師としていらっしゃり、「面白い人」の誘致についてお話しくださいました。面白い人とは、活動量の高い人、関係性の広い人、課題解決能力のある人、デザイナー、アーティスト、IT、建築家などと定義。面白い人に選んでもらう街になるためには、教育や福祉、子育て支援もそうだが、クリエイティブであることが大事と。これからは、工場の誘致ではなく人の誘致、値段や量ではなくデザインや面白さをとお話しされていましたが、まさにその通りだなあと、ぜひ県政運営、いわてのまちづくりの視点に加えて頂きたいです。
 知事もネクタイを持ってらっしゃる障がい者アートを起点に幅広く活動するヘラルボニーさんは、「全日本仮囲いアートプロジェクト」という素敵な取組をされています。建設・住宅を守る「仮囲い」を、「ミュージアム」と捉え直す地域活性型のアート・プロジェクトです。岩手県内の建築現場など県民が目に触れる場所がアートで溢れたら、まちなかにアートがあるって素敵だな面白いなって思っています。海外には、まちなみ自体がアート作品とさえ感じる国が多くありますが、日常でアート文化芸術に触れることで養われるアイデアやコミュニケーション能力、国際性、柔軟性のようなものがあるのではないでしょうか。
 建築家で東京大学名誉教授の藤森照信さんとデザイナーミナペルホネン皆川明さんによる盛岡城跡公園芝生広場整備事業は個人的に楽しみにしています。
 平成29年6月には、文化芸術振興基本法が改正され、観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業等の幅広い分野との有機的連携による文化芸術政策の推進と、また、平成30年6月には障がい者による文化芸術活動の推進に関する法律が公布施行され、障がい者による文化芸術活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進することが求められています。本年3月に新たな「岩手県文化芸術振興指針」も策定されましたが、岩手県における文化芸術の持つ創造性を活かした地域振興の取組、考え方について伺います。

答弁
 文化芸術を生かした魅力あるまちづくりについてでありますが、県では、一人ひとりが豊かな文化芸術とともに生きる地域社会の形成を目指し、県民誰もが文化芸術を鑑賞、参加、創造できる環境の整備や文化芸術を通じた交流人口の拡大などに取り組んで参りました。具体的には、
 ・ 歴史的建造物をユニーク・べニューとして活用した「中尊寺レクイエムコンサート」
 ・ 楽器演奏や舞踊、絵画などを体験できる「キテミテ体験!みんなdeアート」
 ・ 障がいを持つ方々の作品に身近に触れることができる「いわてアール・ブリュット巡回展」
などを、県民、企業、団体、市町村など多様な主体と共に実施するとともに、「いわての文化情報大事典ホームページ」などで情報発信をしてきたところでございます。
 県としては、新型コロナウイルス感染症対策を講じつつ、今年度も「岩手芸術祭」を開催するなど、引き続き文化芸術の振興を図り、観光やまちづくりなど様々な分野と連携して、相乗効果を生み出していきたいと考えております。

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誰もが住みよい社会の実現に向けて走り続けていきます。